2015年02月04日

【有明海】国会通信195,196号

昨日、国会議員と農水省職員に配布した「よみがえれ!有明海・国会通信」195号、196号を大橋法律事務所HPにアップしました。
195号「”開門の間接強制”が最高裁で確定」
http://www.ohashilo.jp/active/ariake_pdf/ariake195.pdf
196号「敗け続けの国は控訴を取り下げよ!」
http://www.ohashilo.jp/active/ariake_pdf/ariake196.pdf
有明海の再生のための東京での行動は、私が弁護士になって間がない2003年2月頃からはじめました。
当時、1997年に諫早湾が潮受堤防で締め切られたこと(通称「ギロチン」)によって、諫早湾の問題は終わったものだとの認識が国会には蔓延していました。
それを、諫早湾締切後も漁業者達が深刻な漁業被害に苦しめられていることなどを国会議員に訴え国政の場で問題にしてもらうために、単身、東京に乗り込みました。新宿にウイークリーマンションを借りました。
当初は、何のツテもなく、東京やその周辺のどこかで環境問題に関する学習会などがあれば、そこに押しかけて、5分でも良いから有明海のことを喋らせて欲しいと訴えました。
そういう活動を続け、 徐々に東京の人達にも有明海の問題が広がり、その内、国会議員とのパイプも出来ていきました。
千葉県の海沿いの町で夜開催された環境問題の少人数の学習会に飛び込んで有明海の問題を訴え、深夜、電車で東京まで戻ったことを今でもはっきりと覚えています。
posted by 後藤富和 at 17:08| 有明海

2015年02月02日

よみがえれ!有明海

よみがえれ!有明訴訟の集会に参加。
この訴訟は僕が弁護士になってすぐに提訴しもう13年目に入りました。僕の第1号事件です。
有明海の再生が僕のライフワークになっています。
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大鋸幸弘さん(佐賀県太良町大浦の漁師):大浦では、ほとんどの船が港に停泊したまま。漁に出ても燃料代にもならない。失業状態。期待していたタイラギも3年連続の休漁。
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松永秀則さん(長崎県諫早市小長井の漁師):正月から3日しか漁に出れていない。補助事業で中国から買い入れたアサリを海からあげたらその後がない。早く開門して貝や魚が戻らないと生活ができない。
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石田徳春さん(長崎県雲仙市瑞穂の漁師):イイダコのシーズンだが取れていない。漁船漁業は全然取れていない。
室田和昭さん(長崎県雲仙市瑞穂のノリ漁師):ノリは初回の水揚げから色落ちし1枚5円にしかならなかった。今はもっと悪くなり1枚3円程度(通常のノリは1枚15円程度)
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写真は大鋸武浩さん(佐賀県太良町大浦のノリ漁師)の色落ちしたノリ(1枚3円)と、柳川の通常のノリ(1枚15円、3等級)
有明海では、島原半島から佐賀県西部、そして諫早湾の対岸の熊本の漁場が特にひどい状態です。
有明海が宝の海によみがえるまでたたかい続けます。
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posted by 後藤富和 at 21:09| 有明海

2014年12月21日

国・農水省は、ただちに諫早湾開門のための対策に着手せよ!

<集 会 宣 言> 国・農水省は、ただちに諫早湾開門のための対策に着手せよ!
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諫早湾潮受け堤防の開門を命じた、福岡高裁確定判決の履行期限から、早く も一年が経過しました。この間、国・農水省は、確定判決を履行しないばかりか、 履行義務をなんとか免れようと新たな訴訟も提起し、「すべての裁判が最高 裁で決着するまでは動けない」として、開門しない現状の固定化を策していま す。ギロチン執行後の、有明海の環境悪化に対する漁業者の悲痛な訴えには一 切耳を傾けず、確定判決不履行による制裁金を課されてもなお、「開門だけは しない」との姿勢を変えようとはしません。

国・農水省のこうした理不尽な対応は、制裁金支払いをめぐる本年4月の佐 賀地裁決定と6月の福岡高裁決定、12月12日の佐賀地裁「請求異義訴訟」判決 において、繰り返し厳しく断罪されました。三権分立制度に基づく法治国家で ある我が国において、司法の確定判決に従うのは当然の責務です。一片の道 理もない主張を蒸し返し、勝つあてのない裁判を続ける国・農水省の姿勢は断 じて許されるものではありません。私たちは、国・農水省が上級審で争うことを 止め、ただちに確定判決を履行することを強く要求します。

今、有明海沿岸地域の漁業者は、一刻の猶予も許されない状況に直面して います。存続の危機にある漁業協同組合も少なくありません。有明海の環境悪 化に対して、国・農水省は、開門に代わる有明海再生事業と称して、約10年間に わたり巨額の公費を投入して来ましたが、環境改善どころかさらに悪化してい るのが現実です。歴史的に破綻しているエセ再生事業に固執することを止め、 「開門なくして有明海の再生なし」という漁業者の声に真摯に耳を傾けること こそ、農林水産業の振興を主管する農水省が為すべきことです。

開門確定判決が履行されないまま、一年間が経過した異常事態にあたり、 私たちはあらためて強く要求します。

国・農水省は、ただちに開門確定判決を履行せよ!

国・農水省は、ただちに漁業も農業も防災も成り立つ万全の開 門準備工事に着手せよ!

2014年12月21日

確定判決不履行1周年抗議全国集会in長崎 集会参加者一同
posted by 後藤富和 at 20:30| 有明海

2014年12月12日

【有明】確定判決不履行1周年抗議全国集会in長崎

本日、佐賀地裁において、国の開門不履行が三度にわたって断罪されました。

これ以上の国の確定判決不履行を許すわけにはいきません。

そこで、下記日程で国の確定判決不履行に抗議する集会を開催します。

ぜひ、ご参加ください。

「確定判決不履行1周年抗議全国集会in長崎」
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日時 2014年12月21日(日)13:30-16:30
会場 長崎原爆資料館ホール
内容 馬奈木弁護団長基調報告、漁業者からの訴え、支援団体からの訴え、アオコ現状報告、意見交換
主催 よみがえれ!有明訴訟原告団・弁護団、よみがえれ!有明訴訟を支援する全国の会、有明海漁民・市民ネットワーク、よみがえれ!有明訴訟を支援する長崎の会
連絡 岩井三樹(0952-25-3131)
posted by 後藤富和 at 12:45| 有明海

【有明】勝訴

また勝った!
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【声明】開門義務不履行が三度にわたって断罪されたことを真摯に受け止め,国は,ただちに開門準備に着手すべきである
 本日,佐賀地裁は,開門請求権の前提となる漁業行使権の存否に形式的問題のある例外的な漁民を除き,潮受堤防排水門の開門を命じた福岡高裁確定判決の勝訴漁民に対して強制執行を許さないという判決を求めた国の請求異議の訴えを退けた。
 立法・司法・行政の各権力を分離して権力相互間の抑制・均衡を図り,権力の濫用を防止して国民の権利・自由を保障しようとする三権分立の近代民主主義国家において,国が確定判決に従うのは当然であり,国の確定判決不履行は近代民主主義国家の否定に他ならない。国が確定判決上の義務を履行しないことも,強制執行によってその履行を強制されることも,いずれもこの国の憲政史上初の不祥事であり,今回の判決は,その不祥事に何ら弁解の余地がないことを明らかにした。
 国が開門義務をサボタージュし,昨年12月20日の履行期限が経過するなかで,有明海漁民の漁業被害はますます深刻になっている。今期,ノリ養殖の漁民は調整池の汚染水の排水によってノリ芽が流れてノリが育たないと訴え,カニ漁の漁民は稚カニを放流して成長した頃に網を入れても1匹しかかからないと訴え,アサリ養殖の漁民は養殖漁場のアサリが大量に死んで1割位しか残っていないと訴えている。開門は漁業被害にあえぐ有明海漁民の死活問題として,ますます切実さを増している。調整池で発生する有毒アオコの毒物はいまや調整池外の海域にも蓄積されており,海域環境の安全すら破壊されようとしている。
 国はこの間,開門義務の不履行を合理化しようと,開門を脇に置いて有明海沿岸4県の協議によって有明海再生を図るなどと発表した。しかしながら,開門をタブー視した有明海再生事業は,すでに歴史的に破綻している。有明特措法が施行されて12年,農水省が開門に代わる有明海再生事業の取り組みを発表して10年が経過し,覆砂,作澪,調査研究などの農水省関連事業だけで430億円,これとは別に,調整池の水質保全に推計550億円もの公金が投入されたにもかかわらず,有明海の漁業被害は深刻になる一方である。真の有明海の再生は,開門を中心に据えた再生事業でこそ実現可能であることは,すでに実証済みである。
 福岡高裁確定判決が命じた開門義務の不履行をめぐっては,間接強制の執行抗告の手続のなかで佐賀地裁,福岡高裁が厳しく国を断罪した。それにもかかわらず,国は,相変わらず効果の目処も立たない再生事業や調整池水質保全対策に湯水のように公金を垂れ流すばかりか,間接強制金の支払いという前代未聞の無益な公金支出を継続してきた。そして今日,請求異議訴訟判決によって,またもや開門義務不履行を断罪された。国は今度こそ司法の判断を真摯に受け入れるべきである。
 見通しのない控訴によって訴訟を弄び,更に開門を遅らせ,深刻な漁業被害に目を閉ざし,これ以上の無駄な公金を支出することなど,もはや許されない。
 いまこそ国は,有明海漁民の窮状を直視し,悲痛な訴えに真摯に耳を傾け,直ちに開門に向けた準備に着手すべきである。
2014年12月12日
よみがえれ!有明訴訟弁護団・原告団
posted by 後藤富和 at 11:57| 有明海

2014年12月09日

【よみがえれ!有明海】農水省交渉

本日、長崎市で開催されたよみがえれ!有明訴訟原告団弁護団と農水省農村振興局・九州農政局との交渉を行いました。
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平方(佐賀・大浦):タイラギは今年も休漁。調整池からの排水でアサリも死んでしまう。農水省は漁民が死滅するのを待っているのではないか。
松本(長崎・有明):漁船漁業は壊滅状態。今は3日に1度しか船を出せない。数日前はたった1匹しか獲れなかった。締め切り以前は1日7〜8万円の水揚げをあげることもあった。今は全然ダメ。農水省はその原因を何と思っているのか。
篠塚(長崎・有明):調整池からの排水でノリは色落ちどころから芽そのものが流れてしまい、そもそも育たない。漁業収入を絶たれた。有明漁民は損ばかりしている。漁業が成り立たず地域も疲弊している。私たちは海でしか生きる道がない。もう行くところがない。
岩井(支援):熊本も長崎と同じ状態で、調整池からドロッとした水が流れてきて海苔の芽流れや、赤腐病、色落ちが起きている。佐賀では最高級ブランド「有明海一番」がはじめて出品できなかった。秋芽の段階で色落ち被害というのはこれまでなかった。佐賀県全体では14円7銭の値がついたが、大浦では7円20銭と半値にしかならなかった。しかも、これは値が付いたものだけ。福岡でも漁連が赤腐病を避けるため網を高吊りを指示しているため、海苔が伸びず船も出せない。
堀(弁護団):確定判決を守らないというのは、憲法違反。皆さんのような公務員を縛るのが立憲主義。皆さんも憲法を守ると誓約したはずだ。なぜ判決を守らない。今期のこの状況にどう対処するのか。
横井(農地資源課課長):資源量の供給が減少し、漁獲の減少になっている。特にタイラギやアサリなど二枚貝類の資源回復について来年度、予算化して取り組んでいく。漁船漁業については、全体的な資源回復を図っていくことが必要だろう。海苔については水温が下がらない中、張り込みの時期が遅れ、台風にも見舞われ、種付けが小潮とぶつかったなどの原因が考えられる。網の高吊りで病気の蔓延を防いでいる。そのため、海苔が育たない結果となっている。漁協の組合長などと話を聞いていきたい。
堀:そんな一般論じゃ納得できない。今、目の前にいる現場に出ている漁業者が口々に調整池からの排水の影響と言っているのに、なぜその声を聴かないのか。
松本:カニ漁場は泉水海(諫早湾)から外側に1-2km出たところ。シンバ(成長した放流稚蟹)を1日1匹見るかどうかというレベル。100把網を手繰って1匹見ただけ。
平方:夏を超えたアサリが10月に死んだ。1割位しか残っていない。今回は貧酸素が原因ではない。
篠塚:下げ潮に乗った排水が回り込んできて溜まってしまう。排水による濁りがとれず、網にもチョコレートのように付着している。粘着性があって水で洗ってもとれない。以前のプランクトンとは違う。今年は海苔の種網ができなかった漁師もいる。農業でいうと苗がない状態。これでどうやって生活するのか。平成23年から毎年こうやった芽流れに見舞われており、4年連続となると資金が底をつく。調整池からの排水がある限り、良くならない。あなた方は、漁民たちが死んでいくのを待っているんじゃないか。多くの漁業者は戦う気力すら失っている。諫早干拓は誰にメリットがあるのか。
瀧戸:うちの排水(調整池からの排水)が見えますか。
篠塚:見えますよ。大量排水したのがすぐわかる。泥みたいなものが沈殿して網に付いてとれなくなる。私たちのところは大きな川がない。諫早湾調整池からの排水しかない。私たちは諫干川と言っている。
堀:この漁民の生の声をどう反映するのか。
岩井:昨年、水産庁は調査に来たが今年はもっと悪くなっている。もう一度調査に来るべき。そして融資の問題。
横井:水産庁に伝えておきます。
堀:水産庁は任せにせず、皆さんも漁民の声を聞いてください。漁民が言っている被害は、調整池に海水を導入すれば解決する問題。調整池の水質保全のために、あなた方は第1期に180億円、第2期で147億かけている。このかん下水道整備は進んだが水質は改善していない。平成20年に、九州農政局は長崎県と調整池の水質保全について協定を結んでいる。「九州農政局は、潮受堤防、両排水門設置者として、調整池水質について問題が発生した場合、調整池からの排水に関する海域の問題が生じた場合は適切に対応し、水質保全目標が達成されるよう責任をもって主体的に取り組」む。なぜ、第3期の水質保全対策をしない。
横井:計画策定主体は長崎県。その中で農水省も協力するというスキームになっている。次の計画を策定しようという段階で開門判決が確定したため計画の策定が停滞した状態になっている。
堀:停滞せずに調整池の水質を良くする方策がないと漁民は困るんですよ。だったら開門しかない。
高橋(熊本保健科学大学教授):漁場の泥からもミクロシスチンが検出されている。調整池から来ているとう漁民の声は正しいですよ。農水省に調べさせたら定量下限値未満となった。やたらに高い定量下限値を設定し、検出されないような調査方法をとっている。私たちの調査で1μg/kg出ているとして農水省に調査を求めたのに、なぜ定量下限値をそれより大きい2μg/kgに設定するのか。
清野(九州農政局):業者が適正にやっている。なんども確認したが、3つの要素から定量下限値を決めた。
高橋:そんなの機械だけで決まるものではない。塩をひとつまみ測るのに体重計を使うようなものじゃないか。どういう計算をしたのか資料を出してください。論文で出せばリジェクト(突き返し)食らうレベル。昨年、大臣にデータを示して調整池からの排水を止めないと大変なことになると言った。この1年間で青酸カリの数十倍〜100倍の急性毒性を持つ物質が600kgも排出された。これを問題ないと考えているのか。
清野:長崎県が設定した水質目標の達成に向けて私たちも努力する。アオコが発生した場合は回収する。流域からチッソやリンが調整池に入り込まないように長崎県や地元にお願いしている。
堀:海域からこんな毒が出ているということを深刻に受け止めなさい。漁民がようやく獲った魚介類から汚染物質が出るかもしれない。そんな大変な問題なんですよ。亀井農水大臣が中長期開門調査を見送る代わりに開門に代わる対策をとると言って調整池水質対策や有明海再生事業が行われたが、平成10年から平成25年まで調整池水質対策で500億円を超えているのではないか。それだけの金をかけても水質保全できないどころか益々悪くなっている。これを皆さん方がどう深刻に受け止めているのか。しかも、開門すれば一発で解決する問題ではないか。水質問題の観点からも開門を深刻に受け止めてもらいたい。また有明海再生事業として430億円使っているが、有明海は再生するどころか漁業被害は益々悪くなっている。他の省庁や県の事業を合わせると莫大な金額になる。開門を脇において協議しても有明海の再生にはならない。
平方:いくら金をかけても開門しない限り海は良くならない。開門して潮流を取り戻すことが一番の対策。それをしないで盛り土をしてタイラギを持ってきても水が悪いんだから死んでしまうだけ。無駄なことに金をつぎ込んでいる。漁業者が求める真の再生事業になんで金を使わないのか。三重県で行われているアサリの垂下養殖など、巨額の費用をかけなくてもできることがあるのではないか。その実験には協力する。
豊(農村振興局):前向きに検討する。
堀:今の悲惨な現状に対してごく一部の救済に過ぎないがぜひやってもらいたい。亀井農水大臣が中長期開門調査に代わる方策を提案して農水省だけで430億円以上かけて対策をやってきたが、10年以上やって何の効果も出ないどころか逆に悪くなっている。これにしがみついていても再生につながるわけがない。抜本的に見直すべき。
posted by 後藤富和 at 16:46| 有明海

2014年11月07日

よみがえれ!有明海・国会通信193,194号

本日、国会議員と農水省職員に配布した「よみがえれ!有明海・国会通信」193、194号はこちらで見ることができます。
http://www.ohashilo.jp/active/ariake.html
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193号「制裁金を支払い続けることは許されない!」
・タイラギ3年連続で休漁
・西川農水大臣との意見交換 開門を求める切実な訴え
・税金から制裁金を支払い続けること許されない!
194号「生物多様性条約会議でも諫早問題視」
・確定判決履行しない
・日韓国際環境賞受賞
・早期開門へ協力を 長崎で署名活動始まる
posted by 後藤富和 at 12:05| 有明海

2014年10月20日

確定判決を守り、諫早湾の水門開放を求める署名

本日、福岡高裁において、よみがえれ!有明訴訟の開門等請求控訴事件口頭弁論が開かれました。
開門したら漁業被害が出るというのがデマであり、今、日常的に水門が開けられ汚水が有明海に排出されていることで漁業被害が送られていることについて、國嶋洋伸弁護士の弁論を紹介します。

皆様、「確定判決を守り、諫早湾の水門開放を求める署名」にご協力ください。
http://goo.gl/zPndkk

1 はじめに
 ここで主張したいことは、短期開門調査によってアサリの被害が生じたとする補助参加人の主張は明らかな誤りである、ということです。
その根拠は明確で、アサリの斃死は、短期開門調査の行われる4年も前の平成10年ころから、現在に至るまで、ほぼ毎年のように発生し続けているからです。
2 短期開門調査以前も以後もアサリ被害は発生し続けている
平成10年7月には小長井町地先の全域で、さらに平成11年には8月と9月と2度にわたってアサリの斃死が発生しました。
平成12年8月には、多くの養殖場でアサリが全滅するという、かつてないほどの大量斃死が発生し、平成13年7月にも大規模斃死が発生しました。
このように、堤防を締切った翌年の平成10年から短期開門調査の前年の平成13年にかけて、すでに4年連続でアサリの大規模な斃死が発生していました。
一方で、短期開門調査の行われた平成14年と翌平成15年は、アサリ斃死の発生があったものの、ごく一部の区域に限られ、全体として水揚量も大幅に回復しました。
しかしその後、平成16年8月には、小長井地先全体で壊滅的なアサリ斃死が発生するなど、その後も現在に至るまで、ほぼ毎年のように、夏場になるとアサリの斃死が発生し続けています。
すなわち、補助参加人らが「短期開門調査時の被害」とするものは、毎年のように発生し続けている被害のごくわずかな断片にすぎません。通年のデータを見れば、アサリ斃死が短期開門調査時にだけ生じたものでないことは一目瞭然です。それどころか、このデータを見れば、むしろ短期開門調査によって被害が減少した、食い止められた、という解釈以外ありえないはずです。なお、詳細は次回提出予定の書面で述べますが、瑞穂漁協では、短期開門調査の後4年間にもわたってアサリ漁獲量の回復効果があったほどです。
3 安定などしていない最近のアサリの漁獲量
補助参加人らの中には、近年はアサリの漁獲量が安定しているという意見も見受けられますが、以前とは養殖の条件が大きく異なります。
以前の養殖は、5、6月にまだ小さな稚貝を撒いて、それが育った翌年の春に採取するというものでした。しかし近年では、夏場の大量斃死を避けるために、秋から冬にかけてすでに大きくなった貝を撒き、翌年の春にすぐ採取します。それでも、3トンの貝を撒いて、3トン採れるかどうか、という程度です。しかもすでに大きくなった種貝の購入資金は補助事業で賄われており、補助が打ち切られれば採算が合わなくなることは必定で、安定しているというには程遠い現状です。
4 さいごに
調整池内から排出される汚水が、諫早湾内のアサリの斃死に影響するという点は、補助参加人も我々もまったく同意見です。
異なるのは、補助参加人らが、今でも不定期に排出される大量の汚水の被害には目をつぶり、開門の際にだけ被害が生じるかのような主張をしている点です。
今の汚水の排出を続ける限り、夏場のアサリの斃死は免れられません。しかし、本件開門により調整池内の海水交換が進めば、汚水の排出はすぐに止まります。
一審原告も補助参加人も、諫早湾の漁民はみな一様に漁場環境の悪化という同じ被害を受けているのですから、目の前で起きていることをもう一度冷静かつ合理的に見直して欲しいと思います。
諫早湾の漁業被害は「これから」起きるのではなく、「もう既に」そして「現在も」起きているではないですか。多くの漁民が組合を去り、後継者も育っていないことが、何よりの証です。
これまで多額の費用を投じて様々な再生事業が行われてきましたが、どれも十分な改善効果はありませんでした。諫早湾の漁場環境の悪化を止めるために残された方法は開門以外にないことは明らかです。
開門すれば漁業被害が出るという明らかに誤った認識を正し、一日も早く本件開門を実現すべきです。
posted by 後藤富和 at 15:08| 有明海

2014年08月29日

よみがえれ!有明海

本日、佐賀地裁において開催された、よみがえれ!有明訴訟の審尋において、長崎県島原市の漁民吉田訓啓さんが意見を述べました。

1 私は長崎県島原市の島原漁協に所属し、漁船漁業とワカメ・昆布の藻類養殖を営んでいます。  
  福岡高裁判決後、3年たてばもとの海が戻ってくると思っていました。開門に希望を持ち、あと数年頑張ろう、頑張って持ちこたえよう、そうすれば今よりも魚が増え、生活が楽になる、そう思ってなんとか苦しい生活を持ちこたえてきました。
まさか、国が開門判決を無視するとは思っていませんでした。
なぜ、私がこのような裁判でここに立たなければならないのか、怒りでいっぱいです。

2 私の1年間の仕事のサイクルは2月から4月はワカメ、5月6月は昆布、7月から10月はクルマエビ、11月から1月はクツゾコ・ヒラメ漁です。
今の時期は源式網と言う流し網でクルマエビ漁をしています。
堤防工事が始まる前は漁船漁業の1年間の収入の半分以上は源式網漁でしたが、堤防工事が始まりクルマエビは徐々に減り始め、締め切ってからは以前の5分の1ほどしか獲れなくなりました。堤防工事以前は年間500キロから700キロ位獲っていましたが現在では150キロから200キロ位です。
他の魚種でも同様に以前の3分の1から5分の1程度の漁獲量です。
これでは燃料代と日々の食事代くらいしかまかなえず、経営的には成り立たない状況です。これは、私だけの状況ではありません。
私の家はワカメ等の藻類養殖で何とか生活していますが、ワカメも海苔と同様に赤潮の影響で飼育が悪く締め切り以前より収穫量がありません。島原の漁業者の大半が50歳以上で漁業だけでは生活できず年金に頼っている状況です。
  
3 そして、この3年間にも、漁場は悪くなっています。それでも、私たち漁民には、開門すれば必ずクルマエビや魚が戻ってくるという確信があります。だから、あと数年頑張ればという思いで、開門を待ち望んでやってきました。ですが、国は福岡高裁の開門判決を無視しました。このような農水省の態度には怒りしかありません。
 今、諫早湾の漁場が死滅してクルマエビが獲れません。開門して少しずつでも諫早湾の潮流が速くなり貧酸素が減少すれば、諫早湾で育つクルマエビの稚エビだけではなく、クツゾコ等の干潟で育つ魚も増えると思っています。エビ類やタコやイカは一生のサイクルが1年から1年半くらいですから、開門すればすぐに増えてくると思います。魚の一生は数年から十数年ありますから、すぐには効果があらわれないかもしれませんが、魚も復活すると思います。
私個人の経験や考えですが、雲仙、普賢岳噴火災害で島原市の南部にある水無川河口域周辺が火山灰や土石流により海底の底生生物が死滅し、1平米に数十匹くらいしか居なくなった海底が、翌年には数千から一万匹位の底生生物が育ちました。その年は蛸壺漁をしていた人が経験したことがないくらいの豊漁だったと言っていました。
山の自然を壊すと再生するまでに100年かかると言いますが、海の再生は翌年には再生が始まると考えています。
開門して5年間の調査をすれば少なからずの再生があるはずです。農水省が開門しないのは、私からすれば開門したら海が再生して漁業者が訴え続けた事が本当だったとなるから、開門しない、させないようにしていると感じます。
国の機関である農水省は、確定判決を自分達の都合の良い様に勝手に解釈し捻じ曲げて開門しないようにしています。
裁判所にはぜひ確定判決を守らない農水省に対して厳しく指導してください。
posted by 後藤富和 at 14:27| 有明海

2014年06月07日

よみがえれ!有明訴訟原告団・弁護団声明

混迷を演出するのではなく,万全の事前準備で早期の開門を

2014年6月6日
よみがえれ!有明訴訟原告団・弁護団

 本日,福岡高裁は,開門確定判決の間接強制に対する国の執行抗告を退けた。確定判決を履行しない場合の強制執行は司法の基本的な機能であり,佐賀地裁に続き福岡高裁は,三権分立の基本原理を国自らが破り捨てるという憲政史上前代未聞の暴挙に対して,断固とした回答を示した。
 この間,昨年11月の長崎地裁の開門阻止仮処分以来,国は,開門義務と非開門義務の2つの矛盾する義務のはざまで身動きがとれないかのごとく,混迷を演出してきた。6月4日の開門阻止仮処分に基づく間接強制後も,ますます身動きがとれなくなったかのように振る舞っている。
 しかしながら,そもそも形の上での義務の衝突を招いたのは国の責任である。開門阻止仮処分の手続のなかで,国は,開門確定判決の根拠になった諫早湾干拓事業と漁業被害の因果関係の判断を敵視して仮処分裁判所の判断の素材とすることを妨げた。一連の経過のなかで透けて見えるのは,開門確定判決があるにもかかわらず,何とか開門を回避したい,開門確定判決に従いたくないという,三権分立の基本原理さえも顧みない国の不遜な態度である。
 いま国に問われているのは,自らが招いた形の上での義務の衝突をすみやかに解消することである。
 確定判決による開門義務は,もはや争いようのない確定的義務である。他方,非開門義務は開門阻止仮処分にもとづくもので,仮処分自体確定したものでなく,また,仮処分は開門阻止訴訟による非開門義務の確定までの暫定的なものである。しかも,非開門義務を命じた仮処分は,事前準備なしの開門を前提としているのであって,開門による漁業被害の救済と,開門による農業,防災などへの悪影響の回避は,両立可能である。
 矛盾の解消は,悪影響の出ないようにしっかりした事前準備を行い,開門阻止仮処分の保全異議手続や開門阻止訴訟において開門にともなう悪影響が発生しないことをきちんと主張立証すること,開門に不安を抱く人々に対する説明責任を果たすことでしかありえない。
 今期,有明海のノリ養殖業は2000年暮れから2001年初頭の歴史的不作の再来に見舞われた。採貝,漁船漁業は,累積的な不漁のなかで,ますます深刻さの度会を増している。
 危機に立つ有明海漁業を救済し,宝の海を取り戻すために,農業,防災などへの不安を払拭する準備工事に1日も早く着手して開門すること,それこそが国の歴史的責務である。
posted by 後藤富和 at 11:23| 有明海

2014年06月04日

霞が関パレード

有明漁民が霞が関パレード。
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posted by 後藤富和 at 13:15| 有明海

2014年05月31日

有明海漁民の叫び

昨日、佐賀地裁において長崎県の有明漁協の組合長である松本正明が意見を述べました。

1 はじめに
 私は,長崎県島原市有明漁協に所属する松本正明です。開門を認めた平成22年12月の福岡高裁判決の原告です。
 私の家は祖父の代から漁業を営んでおり,私自身,中学卒業後漁業者となり,47年目になります。
 現在,有明漁協の組合長を務めております。
 今回,請求異議という裁判手続で意見を述べさせていただきます。

2 開門判決の意味−生きる希望の光
 私が漁業を始めた頃は,海には漁船がひしめき合っていました。海にも港にも人々にも活気がありました。
 しかし,諫早湾干拓事業が開始されると事情が変わってきました。魚が捕れなくなってきたのです。それを決定づけたのは,潮受堤防の締切りでした。仕事場であるはずの海には,漁船がまばらになっていき,活気がなくなってきました。漁業者であるにもかかわらず,漁業で生活をすることができず,やむをえず陸に上がる仲間も出てきました。 みんな,漁業で生活したいのに,魚が捕れないのでやむをえず,陸に上がりアルバイト等をしているのです。心中察してあまりあります。
 私は,「これではいけない。宝の海である有明海を取り戻したい,次の世代に伝えたい。それは自分たちの役割だ。」との思いで,開門を求める裁判に参加しました。経済的にも精神的にも苦しいながらも裁判を続け,ここ佐賀の裁判所でも原告本人として証言をし,佐賀地裁の判決を経て,最終的に福岡高裁で開門の判決を勝ち取ったのでした。
 この開門の判決は,生きる希望の光でした。「漁業者として漁業ができる。仕事ができる。生活ができる。」と思えるようになったのでした。
 しかし,この希望は裏切られました。国は,3年という猶予期間があったにもかかわらず,何ら対策工事等をせず,結局,約束の日になっても開門をしませんでした。

3 現状
 そして,この3年間という猶予期間の間も,漁場は悪くなっています。5月のこの時期,私は,イイダコを捕っていますが,今年の漁獲量は,去年や一昨年と比べても,5〜6割減っています。潮受堤防締切り前とは,比べるまでもありません。
 当然のことですが,私が裁判に参加した頃よりも判決の頃の方が,そして判決の頃よりも現在の方が更に悪くなっているのです。例えば,潮受け堤防締切り前は,同じ時期に毎日カニも捕っていましたが,潮受堤防締切り後しばらくして,止めてしまいました。漁船を動かす油代分も取れなくなったからでした。このように現状が悪化していることは,漁協の組合員の人数にも反映されます。
 私は,現在,長崎県の有明漁協の組合長をしていますが,潮受堤防締切り前の平成7年頃には300人位だった組合員が,平成26年には140人位と半減しました。他の漁協と合併したにもかかわらずです。
 このままだと,近い将来,有明漁協自体が解散に追い込まれるのではないかととても心配です。
  
4 漁業者が一番求めているのは開門であること
 先程も述べたように,漁業者が一番求めているのは,判決どおりに開門してもらうことです。
 国は,自らの意思で最高裁に上告せずに,福岡高裁判決を確定させたのに,なぜ,判決を守らないのでしょうか。
 そのため,私たちは,やむをえず,間接強制という強制執行手続きを行うことにしました。まさか,国が判決を守らないとは思いませんでしたし,また,裁判をやる羽目になるとは思いませんでした。
 この強制執行手続きでは,1日1万円の制裁金が科されるとのことですが,別に私たちは,このお金が欲しくて強制執行手続をしたわけではありません。1日でも早く開門を行ってもらいたいだけなのです。
 にもかかわらず,国は,開門をしたくないばかりに請求異議という裁判を起こしてきたのです。自らの責任を棚に上げてこのような裁判を起こすことなど許されるのでしょうか。
 裁判所におかれては,一刻も早く国の請求異議という裁判を棄却し,1日でも早い開門の実現,ひいては有明海の再生に力を貸してくださるようお願いいたします。
posted by 後藤富和 at 09:14| 有明海

2014年04月22日

よみがえれ!有明海・国会通信188号-190号

明日、国会議員と農水省職員に配布する「よみがえれ!有明海・国会通信」188号-190号を大橋法律事務所のサイトにアップしました。
188号「アオコ増加で毒素拡散の恐れ 諫早湾、魚介類汚染の危険」
http://www.ohashilo.jp/active/ariake_pdf/ariake188.pdf
189号「諫早開門しないなら国に制裁金」
http://www.ohashilo.jp/active/ariake_pdf/ariake189.pdf
190号「漁業者「一歩前進」と歓迎も 抗告には怒り」
http://www.ohashilo.jp/active/ariake_pdf/ariake190.pdf

バックナンバー
http://www.ohashilo.jp/active/ariake.html

韓国語版(86号)
http://www.ohashilo.jp/active/ariake_pdf/ariake086korean.pdf
posted by 後藤富和 at 08:58| 有明海

2014年04月21日

真の公共性とは

よみがえれ!有明訴訟の支援の方から、昨年、長崎地裁で私が陳述した意見をもう一度聴きたいとの要望を受けましたので再掲します。韓国の順天湾を例に「真の公共性」とは何かと突きつけたものです。

1 開門がもつ公共性
開門を行っても本件事業の効果は何ら失われない。むしろ、開門した方が大きな効果を生み出すものである。
すなわち、高潮が予測されるときに排水門を閉じればいいだけで防災効果は失われない。また、現状において破綻したと言ってもおかしくない諫早干拓地での営農は、開門することで、真の意味での環境保全型農業として漁業とともに両立発展し、地域経済の振興も図れるはずである。
準備書面8では、干潟保全を選択した韓国の順天市の例を参考に、早期に開門を実現することでもたらされる真の公共性について明らかにする。

2 順天市の取り組み
順天市は、釜山から鉄道でおよそ2時間半の距離にあり、2000年頃までは、これといった産業がない農業と漁業を中心とした地方都市であった。順天市には、諫早干拓潮受堤防の内側の干潟とほぼ同じ面積である順天湾干潟が広がっている。そこは、ナベヅル、コウノトリ、クロツラヘラサギなど約220種の鳥類が飛来し、ムツゴロウなど有明海や順天湾などごく一部の干潟でしかみられない魚介類が多数生息する生物多様性の宝庫である。
順天湾においても、諫早湾と同様、長年にわたって干拓が行われ、1990年代には、大型公共事業が持ち上がり、順天湾の開発に賛成する市民や工事業者と、反対する市民やNGOとの激しい対立がはじまった。
諫早湾が潮受堤防で締め切られた1997年、順天市では、順天湾を保全するか開発するかについて公開討論会を開催している。討論会を繰り返す中で、市民や市関係者らが海外の先進事例を視察し学んだ結果、これまで開発推進派だった市民の中にも順天湾保全の機運が高まっていった。
2003年、順天湾協議会が始まり、その中で、順天湾保全の方針が決まった。それ以降、順天市は、市域を市街地、生態縁辺部、推移地域、緩衝地域、環境保全地域などに区分けし干潟の生態を保全した。例えば、干拓によって農耕地になった部分を湿地に復元する事業を行ったり、渡り鳥の保護のために電柱を撤去する事業も行ったり、有機農業を徹底したり。水質保全のために順天湾に面した郷土料理店に立ち退いてもらったりした。当初、市民らの反発もあったが、これら干潟保全の徹底した取り組みの結果、順天湾には多くの観光客が訪れ、移転した飲食店にも従来以上の観光客が押し寄せるなど市民に大きな利益をもたらす結果となっている。
順天湾保全の取り組みは、韓国国内だけでなく国際的にも高く評価され、2006年に、国際的に重要な湿地であるとしてラムサール条約に登録された。
2008年、世界NGO湿地会議が順天市で開催された。また、同年開催されたラムサール条約第10回締約国会議では、順天湾が公式エクスカーションの場に選ばれ、各国の政府代表者やNGOが順天湾を訪れた。ちなみに、これらの国際会議において、いまだに無意味な環境破壊を行っているとして国際社会から名指しで批判されたのが「ISAHAYA」である。
さらに、同年、順天市は、韓国環境府が主催する第1回水環境大賞を受賞した。ちなみに、この時、海外における優れた水環境保全の取り組みとしてガイヤ賞を与えられたのは、原告弁護団である「よみがえれ!有明弁護団」である。
2010年には、順天市は、国連「住みやすい都市」銀賞に選ばれている。
そして、今年、順天湾周辺を会場に「国際庭園博覧会」が開催され、内外から多くの観光客が順天市を訪れている。東京や大阪、福岡からもツアーが組まれており、多くの日本人も順天市を訪れている。
順天湾を訪れる観光客の数は、2002年には年間10万人程度であったが、2010年には30倍の年間300万人に膨らみ、今年は500万人もしくはそれをはるかに超える観光客が干潟を訪れるのではないかと言われている。
経済的には、順天湾の保全のために順天市がかけた費用の10倍以上の効果を生み出している。

3 真の公共性の実現〜諫早と順天、二つの都市の歩み〜
順天市において、干潟の開発か保全かの公開討論会で議論されている頃、諫早では、市民の反対を押し切り潮受堤防が締め切られた。それから、16年、諫早市と順天湾とは全く違った道を歩んだ。
特に産業のない地方都市であった順天市は、今や国際会議や博覧会が開かれ、年間300万人以上が干潟を訪れる韓国有数の環境観光都市に成長した。
これに対し、諫早市は、潮受堤防締め切り以降、漁業者の自殺が社会問題となる程、漁業は衰退し、さらには諫早干拓で生まれた農地をはるかに上回る耕作放棄地が生まれ、市街地はいわゆるシャッター街の様相を呈している。
順天市でできたことが諫早でできない理由はない。
諫早湾の締切によって破壊された環境を再生させるという壮大なプロジェクトは、自然再生のモデルケースとして世界中から注目されるはずであり、成功の暁には、世界中から政府関係者や研究者、NGOが訪問し、諫早市の成功に学ぶであろう。諫早湾がラムサール条約に登録されるのも夢ではない。
また、一度破壊した自然環境を再生する取り組みは絶好の環境教育の場ともなり、諫早市には全国各地から修学旅行の学生達が訪れるであろう。
さらに、有明海の再生を成功させたとして諫早干拓地での農産物はブランド化し高い価格で取引されるであろう。
開門を悲劇と捉えるのではなく、前向きに受け入れ、環境と地域の再生という目的を明確に持ってNGOや市民らとともに協力して取り組むべきである。これこそが、真の意味での「公共事業」である。
posted by 後藤富和 at 15:55| 有明海

2014年04月20日

有明海の問題(解説)

有明海の問題が分かりにくくなっているので簡単に説明します。

1997年、諫早湾干拓事業によって諫早湾奥が締め切られました。締め切りと前後して有明海の環境は激変し甚大な漁業被害が発生し、多くの漁業者が自ら命を絶つこととなりました。
 2010年12月、福岡高裁は、国に対して、3年以内に排水門を開放するよう命じましたが、履行期限である2013年12月を経過しても国は排水門を開けませんでした。確定判決を国が履行しないという憲政史上あってはならない事態が生じています。
 今年4月11日、佐賀地裁は、国に対して、2か月以内に排水門を開放すること、及び2か月以内に開放しない場合は、漁民1人に1日あたり金1万円を払うよう命じました。確定判決を守らない国に対して裁判所が厳しい強制執行の判断を下したのです。
 国はこの佐賀地裁の間接強制に決定に対して不当にも抗告をしました。
 しかし、国がいたずらに時間を浪費している間にも漁業者たちの苦しみは続きます。
 今、国がやるべきことは、メンツにこだわることでも、開門に反対する長崎県知事の顔色を伺うことでもありません。開門をしても農業に悪影響が出ないことは農水省自身が一番良く知っているはずです。
国は、長崎県知事の意見を根拠に開門を先延ばしにするのではなく、諫早湾、有明海で生じている漁業被害に真摯に向き合い、被害の回復、そして違法状態の解消のために、すみやかに開門の実現に向けた対策工事に着手すべきです。
posted by 後藤富和 at 15:41| 有明海

2014年04月11日

よみがえれ!有明訴訟間接強制事件決定主文

本日午前10時に出されたよみがえれ!有明訴訟間接強制事件の決定主文をお伝えします。
「債権者」は有明海の漁業者、「債務者」は国のことです。

1 債務者は、債権者らに対する関係で、この決定の送達を受けた日の翌日から2か月以内に、防災上やむを得ない場合を除き、国営諫早湾土地改良事業としての土地干拓事業において設置された、諫早湾干拓地潮受堤防の北部及び南部各排水門を開放し、以後5年間にわたって同各排水門の開放を継続せよ。
2 債務者が前項の期間内に前項記載の義務を履行しないときは、債務者は、各債権者に対し、上記期間経過の翌日から履行済みまで、1日につきそれぞれ1万円の割合による金員を支払え。
posted by 後藤富和 at 10:50| 有明海

農・漁・防災共存の段階的開門で諍いに終止符を

−声明−
農・漁・防災共存の段階的開門で諍いに終止符を
2014年4月11日
よみがえれ!有明訴訟弁護団・原告団
 本日,佐賀地裁は,開門阻止派の人々の非協力と反対行動を口実に却下を求めた国の意見を退け,福岡高裁開門確定判決の履行をサボタージュする国に対する間接強制を認めた。国が確定判決を履行しないなどという憲政史上前代未聞の不祥事を裁判所は厳しく断罪したのである。
 2010年12月の福岡高裁開門判決後,わたしたちは,国に対し,被害を被った有明海漁民と,地域の人々の双方に謝罪することを求めた。潮受堤防締め切り以来長期間にわたって有明海漁民は被害に苦しんでいる。潮受堤防締め切りと被害との因果関係が認められた以上,加害者たる国が被害者たる漁民に謝罪するのは当然である。地域の人々に対して国は,本来あるべき防災対策を実施せず,その期待は干拓事業によってしか実現できないように欺いてきた。確定判決によって,潮受堤防締め切りによる防災効果は限定的であり,代替可能であるとされた以上,地域の人々に対して謝罪し,本来あるべき防災対策に着手することもまた,当然である。
 しかるに国は,確定判決の主文には従うが,主文を導き出した確定判決の理由中の判断には従わないなどという不遜な態度に終始し,判決確定後も,潮受堤防締め切りと漁業被害との因果関係や不十分な防災効果について否定し続けた。従うと言う主文でさえも,全開門ではなく制限開門で十分などとねじ曲げて解釈し続けた。
 今日の諍いは,こうした国の確定判決軽視の不遜な対応に根源がある。
 国は,いまこそ,態度を改め,開門による漁業被害の軽減と科学的な開門調査の実施という有明海漁民の要求,農業用水の確保と防災の実現という農業者や地域の人々の要求の双方を,真摯に実現しなければならない。
 わたしたちが求めるのは,農・漁・防災共存の開門である。本日の間接強制が認められたからと行って,わたしたちは農業用水等の手当もないままに,ただちに開門せよと求めているのではない。今回,直接強制によるまったなしの開門ではなく,国がサボタージュしている準備工事が直ちに実施されて,農・漁・防災共存の開門が実現されるよう,間接強制という手法を選択したのもそのためである。
 わたしたちが再三にわたって指摘し続けたとおり,実績のある短期開門レベルの開門から開始し,順応的管理の手法を用いて,潮汐条件や排水門の開度を変えつつ,必要なデータを得ながら安全,安心の全開門を模索する開門方法を採用すれば,関係者の協議の課題も明確になり,実りある協議が可能になる。
 有明海漁民の被害は,もはや極限に達している。1日も早い開門を,強く望んでやまない。
以上
posted by 後藤富和 at 10:31| 有明海

2014年03月24日

【声明】国は諫早湾潮受け堤防排水門の常時開放を命じた確定判決を直ちに履行せよ!

声明
国は諫早湾潮受け堤防排水門の常時開放を命じた確定判決を直ちに履行せよ!

2010年12月、諫早湾潮受け堤防排水門の常時開放を命じた判決が確定した。これによって、漁業被害に苦しむ我々有明海漁民は、ようやく希望の光を見出すことができた。ところが国は、開門期限までの3年間開門準備をサポタージュし続け、ついに確定判決を履行しないという法治国家にあるまじき暴挙に出た。一体、国は何度、我々漁民を騙せば気が済むのか。
 諫早湾干拓事業の開始前、国は漁業にはほとんど影響が出ないと我々に説明した。しかしながら工事着工直後の諫早湾タイラギ死滅に始まり、現実には深刻な被害が出たではないか。2000年のノリ大不作の時、我々漁民の抗議行動に対して国は第三者委員会で検討すると約束しました。ところが、その第三者委員会から、中・長期開門調査が提言されたにも関わらず、その提言を履行しないとはどういうことか。しかも、確定判決が命じた開門を履行しないばかりか、漁民を被告にして開門義務の免除を求める訴訟を起こすとは何事か!
 開門確定判決の理由となった諫早湾締め切りと漁業被害との因果関係を認めない国の不遜な態度が、有明海再生を妨害し、地域社会を混乱に陥れている最大の原因である。有明海の漁民と地域の人々を馬鹿にした国の態度に、我々は怒りを込めて、強く抗議する。
 ノリの大不作からすでに14年が過ぎ去った。我々の生活は困窮を極め、もうこれ以上待てないところまで追いつめられている。いま有明海の漁業資源は、再生の種さえも無くなりかけている。有明海再生には、もはや一刻の猶予もない。既に多くの仲間の漁民が将来を悲観して命を落としている。このままでは悲劇を繰り返すばかりだ。
 国は長崎県の協力が不可欠などと言って、サポタージュを合理化しようとするが、長崎県の言い分は駄々っ子そのものであり、国がその気になれば、農業と漁業が共存する開門は容易に実現できるではないか。農業用水の確保や防災対策などの工事は、開門に関わりなく、そもそも農民や地域にとって必要な工事ではなかったか。
 事態を混乱に陥れているのは、漁民、そして農民と地域までも騙し続ける国である。諍いに終止符を打たんとした確定判決が断罪したのも、そうした国の姿勢である。双方に謝罪し、農業と漁業・地域が共存する開門に国が真剣に向き合わない限り、地域は翻弄されるばかりである。
 漁民を見殺しにする国を我々は絶対に許さない!有明海沿岸にすむ我々に未来はない。
国は諫早湾潮受け堤防排水門の常時開放を命じた確定判決を直ちに履行せよ!

2014年3月24日
有明海4県漁民 有志一同 
posted by 後藤富和 at 21:20| 有明海

2014年03月10日

よみがえれ!有明海〜国の怠慢

よみがえれ!有明訴訟弁護団の國嶋洋伸弁護士の弁論

1 私からは本訴準備書面1の第4「本件確定判決以降の事実経過の真相について」で述べた内容につき、国が当初から一貫して開門しないとの決断のもと、自ら「できない理由」を作り出しては、時間稼ぎを繰り返し、積極的なサボタージュを続けてきたことを、口頭で補足説明します。

2 我々弁護団は、本件確定判決以降、判決履行を求めて国との意見交換会を続けてきました。そこで明らかになったことは、国は判決履行のための選択をしなければならない局面で、いつも最も迂遠な道、あえて反発が強い方法を選ぶことにより、自ら「できない理由」を作り出して、時間稼ぎをしてきたということです。
具体例を挙げれば、
@本件確定判決直後、堤防の改修や排水ポンプ設置など、すぐにとりかかれる工事があったにもかかわらず、無用なアセスのために2年もの歳月をかけて、そのアセスが終わるまで何もしないことに決めました。
A最も重要なテーマである農業用水の代替案においては、当初、簡易なため池案ではなく、あえて地元の反発が最も強い地下水案を選びました。
B広報活動にあたっては、素早く広範囲の人に伝わる記者レクや新聞広告、パンフレット配布などではなく、あえて門前払いを食らうなど、効率の悪い戸別訪問を選びました。
C工事の着手については、わざわざ事前に時間と場所を開門反対派に通告する一方で、当然予想された実力阻止行動に対する何の準備もアイデアもないまま、すげなく追い返されることを繰り返しました。

3 このように枚挙にいとまがない国の時間稼ぎですが、準備書面1で述べたように、われわれ弁護団、原告団は、国との意見交換会が開催される都度、事前に警告し、事後にも抗議し、具体的な案を示して改善を迫ってきました。
しかし、われわれ弁護団、原告団がどれだけ道理を尽くして、具体的に分かりやすく事態打開のためのプランを提案しても、国は一向に耳を傾けようとはしませんでした。それどころか、自分たちのプランは明らかにせず、結果として当然のようにすべて失敗し、怒りや反発を生みだしてきました。
準備書面1では、国が自ら「できない理由」を作りだすもととなる、開門しない決断が交渉の中であらわれた象徴的なエピソードをいくつか上げています。
たとえば、国は農業用水代替案の中核である海水淡水化プラントの発注を既にストップしていたことを半年以上も隠し続けてきました。昨年12月16日の意見交換会で、我々は、昨年5月ころの段階で既にプラントの発注にストップがかけられていて、それ以降まったく製作にとりかかっていないことをはじめて知らされました。
履行期限ギリギリの段階まで、国は「やれることはやっているから大丈夫。」などと言っていましたが、我々弁護団、原告団をだまし続けていたことは明らかです。このことを見ても、国が当初から開門を実現する気がなかったことは明白です。
 また、九州農政局の事業調整室長が「(国が)開門する大十字架を背負った」と発言したことも明らかとなりました。イエスが民衆の身代わりとなって罪をかぶった故事にならい、耐え難い苦難を負わされることを「十字架を背負う」といいますが、「漁業にはほとんど影響がない」などと国に騙されて、深刻な被害を背負わされているのは有明海の漁民の方です。
 後になって国は発言を取り消しましたが、本音では自分たちが司法に罪をかぶせられた、不当な苦難を負わされた、と考えていることは疑いようがありません。
 
4 履行期限を過ぎた今もなお、月に2回のペースで国との意見交換会を続けています。国は、「話合いで事態を打開したいと言ってきたのに、間接強制をかけられたので仕方なく請求異議訴訟で争う。」などと述べています。
 しかし、国のいう「話合い」の実態は、国側は何ら具体的な方針も期限も示そうとしない一方で、我々が農漁共存を目指して具体的な提案をしても真剣に耳を傾けようとしない、そのような虚しいやりとりがこれまで幾度となく繰り返されてきました。何らかのきっかけがない限り、国の「できない理由」探しと時間稼ぎのための「話合い」が今後も続くであろうことは明らかです。
 国のいう、何ら具体的な中身のない「話合い」では解決できないことは、この判決確定後の3年間でも、何一つ事態が進展せず、むしろ開門反対派の反発を煽っただけであるという「結果」が如実に示しています。
 我々が国と意見交換を続けてきたのは紛争解決のためです。しかし、債務者である国の側には本当に紛争を解決するつもりがない以上、法のルールに従った間接強制によって、解決に向けて進みださなければならないことは当然です。
 裁判所には、本件の真相を正しく見究めて、公正な判断をされるよう求めます。
posted by 後藤富和 at 09:20| 有明海

2014年03月08日

よみがえれ!有明海〜漁民の願い

佐賀県太良町の漁業者平方宣清さんの意見陳述

1 私は、佐賀県太良町で主にタイラギ潜水業、アサリ養殖、クルマエビ漁で生計を立てていた漁業者です。壊れていく有明海、地域社会、漁業者の生活を前に、2004年、必死の思いで裁判を起こし、国に対して壊れていく有明海の被害を訴えてきました。
  しかし、国は私たちの被害の訴えに全く耳を傾けませんでした。それは、福岡高裁判決が確定し、国に開門義務が課せられてからも同じことで、国には、開門義務を履行しようという気が全く感じられませんでした。
  開門のための対策工事に3年必要と自ら言いながら、何も実行してこなかった国が、今回、開門義務自体を否定する裁判を起こしたことに、強い怒りを感じています。いったい国の何を信じたらいいのかわかりません。
今日、この場で、改めて、皆に、私たちの受けている被害の実情を知ってもらうために意見陳述をします。

2 諫早湾干拓事業が始まる前、有明海は生物が湧き出るように育つ宝の海でした。私の家は先祖代々150年にわたって太良町に暮らし、漁業で生計を立ててきました。私もまた、15歳の頃にはタイラギの潜水業を始め、19歳のときに漁業を継ぎました。
裁判官はタイラギをご存知ですか。大型の2枚貝で料亭などでも食される高級貝です。潮受堤防締切前、有明海ほどタイラギが獲れる海は日本全国どこにもありませんでした。どれくらい獲れるかというと、1分間で100枚です。4か月のタイラギの漁期の間、1分間で100枚獲り続ける漁ができたのです。タイラギだけで、良い人は1500万円、悪くても1000万円の収入をあげることができていました。タイラギ以外にも、クルマエビもよく獲れました。漁期の間、寝ないようにして獲り、夫婦で1か月も働けば200万円くらいの水揚げがありました。私の所属する大浦漁協の参事が、「大浦の組合員だけで太良町の歳入の半分を稼ぎ出している。」と誇らし気に言っていたことが思い出されます。

3 その豊かな海が、諫早湾の干拓事業で壊れました。国は、諫早湾干拓事業を始める前、私たち漁業者に対して、漁業にはほとんど影響が出ないと説明しました。仮に被害が出れば速やかに協議をするとも言いました。けれども、現実に被害が甚大に出ても、国は何もしませんでした。
今、タイラギはほとんど獲れず、去年に引き続き今年も休漁です。稚貝すら育たず、このままではタイラギが消えてしまうと漁業者は皆心配しています。今はアサリの時期ですが、例年なら50〜60キログラム獲れるはずが、5、6キログラムしか獲れません。イイダコも、潮受堤防締切り前は200キログラムは獲れていたのが、今は獲れても30キログラムくらいです。獲れない物ばかりです。ノリも、秋芽もとれず、冷凍ノリもすぐに色落ちしてしまって商品になりません。夏にはシャコやアナゴの漁期ですが、去年の経験からして、ほとんど獲れないと思います。
仲間の漁業者は、2月7日から漁に出ていません。出ても、船の油代も稼げないからです。このままでは、有明海の漁業はつぶれてしまいます。

4 国は、私たち漁業者の被害の訴えを真剣に取り上げてくれたことはありません。福岡高裁判決は、潮受堤防締切と漁業被害の因果関係を認めて開門を命じました。それなのに、国は、謝罪するどころか、「開門義務は負うが被害は認めない」と答弁を繰り返してきました。
それで、今回の開門義務自体の否定です。国は、私たち漁民との交渉の中で、期限までには開門すると、繰り返し説明してきました。それなら、その約束を守らなかった以上、今回こそ謝罪するのが筋ではないでしょうか。謝罪もしないで、「開門義務はない。」「権利濫用だ。」などと、いったいどの口が言うかと心底怒りを覚えます。漁業者を馬鹿にしています。
  今回の請求異議の申立書では、「こんなに色々努力しました。」と国が主張しているとのことです。漁業被害の現場すら見に来ず、いったい何を努力したというのですか。先日2月22日の農水交渉でも、漁業被害の現場を案内しますと漁業者が申し出たのに「検討します」の一点張りでした。毎回こんな感じで、被害を直視しようとしません。
こんな態度だからいつまでたっても筋のとおった説明ができず、開門できないのです。

5 4、5年前、盆ころから北風が吹きだし、赤潮が有明海外海に追いやられたことがありました。その年は、タイラギが少し獲れました。赤潮さえなければ、タイラギは戻ってくるのです。今は、潮受堤防によって締め切られた調整池から定期的に汚染された水が流されて赤潮が発生していますが、調整池に海水を導入しさえすれば赤潮は減り、有明海は必ず回復します。
  司法を蔑ろにし、三権分立を愚弄する国に対し、司法は厳正に判断してください。早く有明海が回復に向かうことを切に願っています。
posted by 後藤富和 at 17:17| 有明海

よみがえれ!有明海〜島原市の漁民の思い

長崎県島原市の漁業者中田猶喜さんの意見陳述。

1 はじめに
  私は,1950年(昭和25年)1月4日,長崎県島原市で生まれました。
  私の家は,祖父の代から漁業を営んでおり,私自身,中学卒業後漁業者となって48年目になります。
  現在,島原漁協に所属しており,妻と二人で漁業を営んでおります。
  今回,請求異議という裁判手続で意見を述べさせていただきます。

2 開門しなかった国・農水省
  まずはじめに私が述べたいのは,なぜ,私がこの場所に立っているのか,立たなければならないのか,という疑問です。
  私は,平成22年12月の開門を認めた福岡高裁判決の原告です。この判決は確定しました。私は,これでようやく有明海再生への第一歩を踏み出せると思い,遅くとも開門期限の平成25年12月20日までには開門がなされると信じて,その日をまだかまだかと待ちわびていました。
  しかし,この期待は見事に裏切られました。
  裁判制度は国の制度ですので,判決が確定すれば国は判決を守ると考えるのが普通です。まさか,国が確定判決を守らないなど,考えもしませんでした。
  しかも,国は,自分の怠慢で開門をするための対策工事をせず,猶予期間の3年を無駄にしたのに,そのことを棚に上げ,福岡高裁判決の原告であった私たちに対し請求異議という裁判を起こしてきました。どうしても,国は,開門をしたくないのです。  

3 諫早湾干拓事業の失敗を認めたくない国
  では,なぜ,国・農水省は,開門をしたくないのでしょうか。
  それは,開門してしまえば,国・農水省がかたくなに否定してきた諫早湾干拓事業による漁業被害の発生が,潮流の回復などの漁場環境の好転,漁獲量の回復という形で証明されてしまうからです。そして,証明されてしまえば,もはや閉めきることはできません。
  このことは,とりもなおさず諫早湾干拓事業の失敗を意味します。だから,国・農水省は,開門しないことに一生懸命なのです。
  そして,開門が先延ばしされれば,それだけ漁場は悪化しますから,それだけ開門した時の漁場の回復にも時間がかかります。
  だからこそ,仮に開門することになっても,国・農水省は先延ばし先延ばしにしたいのです。

4 現状
  この先延ばしは,私たち漁業者にとっては,最悪の状態が続くことを意味します。
  今は,クチゾコの季節です。以前は,一潮で7日くらい漁に出ていましたが,今は一潮で2〜3日しか漁に出ません。というのも,漁に出ても網にクチゾコがかかっておらず,取れても10s,ダメな時には3〜4s位しか取れず,船の油代にも満たないからです。
  また,現在,南北排水門から,調整池の汚い淡水が大量に流されています。つい最近も,おそらく2月16日ころだと思いますが,このときも大量の排水がなされ,網が汚れて魚がかかりませんでした。調整池ある限り,有明海の漁船漁業者に未来はありません。
  現に,私が所属する島原漁協は,組合員の高齢化が進むとともに,毎年組合員が減っています。その根本的な理由は,諫早湾干拓事業によって,魚が捕れないからです。私は16歳で漁業を始めましたが,今は組合の若手といっても40歳代です。生活の基盤が成り立たない限り,つまり,有明海が良くなるという見込がない限り,若い漁業者は増えません。それには開門しかありません。
  
5 小手先の対策事業ではなく開門による有明海の再生を
  これまで,国は,開門をしない他の方法による対策事業を行ってきました。
  しかし,これらの対策事業はなんら効果がありません。小手先だけの対策事業では有明海の再生などできないのです。だからこそ,福岡高裁は,開門判決を下したのです。国は,請求異議など取り下げるべきです。
  有明海の再生には,開門しかありません。
posted by 後藤富和 at 13:42| 有明海

2014年02月07日

【よみがえれ!有明海】公正審理を求める署名にご協力ください

2010年12月、諫早湾干拓潮受堤防排水門の開放を命じた福岡高裁判決が確定しました。
しかし、国は確定判決を履行せず、現在もずるずると開門を引き延ばそうとしています。
その間にも、漁業被害は拡大し、有明海の漁業者の自殺があいついでいます。
魚介類はもちろん、今期はノリも不作になりそうな中、一日も早い開門が求められています。
昨年12月に佐賀地裁に申し立てた間接強制がかかるかどうかが、当面の最大の課題になっています。
そこで、佐賀地裁へ公正な審理・判断を求める署名に急遽取り組みます。3月中には結果が出る可能性があり、緊急の取り組みです。署名の取り組みにご協力願います。集まった署名は署名用紙の取り扱い団体のところにお送りください。よろしくお願い致します。
署名用紙は以下のサイトからダウンロードしてお使いください。
http://www.ohashilo.jp/active/ariake.html
posted by 後藤富和 at 14:25| 有明海

2014年01月25日

【諫早湾】開門をめぐる実りある対話を実現するために

よみがえれ!有明訴訟弁護団がこのほど、諫早湾干拓事業潮受け堤防の開門をめぐり対話実現のための提言を発表しましたのでご紹介します。以下提言全文です

―提言―
【開門をめぐる実りある対話を実現するために】
                        2014年1月
                        よみがえれ!有明訴訟弁護団

1 開門をめぐる国の対話呼びかけの現状

  憲政史上初めて国が確定判決を履行しないという前代未聞の事態が発生し、2010年12月に確定した福岡高裁開門判決の履行をめぐって混乱状態が続いている。 
  そのなかで、国は、干拓事業の行われた長崎県、漁業被害に苦しむ漁民がいる佐賀、福岡、熊本の有明海沿岸自治体と、福岡高裁開門確定判決の当事者である原告団・弁護団、開門に反対する干拓地・背後地農民、背後地市民ら各関係者に対話を呼びかけている。
  しかしながら、長崎県知事を先頭に、干拓地・背後地農民と背後地市民らは、開門を前提とした協議には一切応じないとする頑固な態度を取り続け、他方、国は抽象的に対話を呼びかけるだけで、各関係者の利害調整の具体策を示さないため、現状では、実りある対話が実現する見通しはない。
  背後地の人びとは、長年にわたり、防災や農業用水に関する質実な願いはすべて干拓事業によって実現するという国の方針を信頼してきたため、開門に対して感情的な反発すら抱いている。こうした想いに対して、国はなんら有効な対応策を示していない。
  また国は、確定した福岡高裁開門判決の勝訴原告・弁護団である私たちに対しても、確定判決に拘束されるのは主文のみだと言い放ち、主文を導き出す根拠となった漁業被害や被害と事業の因果関係など福岡交際が判決主文を導き出した肝心の理由については、これを認めないという不遜な態度に終始し、私たちとの信頼関係を損なってきた。

2 調整すべき各当事者の利害関係

(1)  2003年12月のノリ第三者委員会による開門調査の提言依頼、開門と開門調査の実現は、深刻な漁業被害に苦しむ有明海漁民の悲願であった。漁民は、長期化する不漁のなかで、家庭を破壊され、生業であった漁業を諦め、自殺に追い込まれるなどの被害を余儀なくされている。漁業を基盤とする地域社会も大きな痛手を被り、疲弊している。円滑な開門と科学的な開門調査の実施は、漁民にとって譲れない課題である。
(2)  また、昭和32年の諫早大水害をはじめとする災害の歴史的経緯のなか、干拓地背後地の人びとは、防災に対する強い願いがある。また、背後地農民は十分な利水計画が立てられないまま、長く農業用水確保に苦しんできた。こうした防災と農業用水に対する背後地の要求は、1982年に現在の干拓事業構想が浮上して以来、すべての干拓事業によって解決するものとされてきた。そのため、湛水被害解消のための排水機場の設置などは、それ以来、長く見送られてきた。防災と農業用水の確保は、これらの人びとの切実な願いであり、それをないがしろにした利害調整と対話はありえないところである。
(3)  私たちは、開門訴訟の過程で、防災や背後地の利水を干拓事業によってまかなうのは、全国的にも例がなく、誤りであることを指摘してきた。確定した福岡高裁確定判決もまた、干拓事業による防災効果は限定的であることを確定している。防災や利水は、本来、全国の経験に学びながら、独自の課題として本格的になされるべきである。防災や利水の要求はすべて干拓事業によって実現するという国の方針に従ってきた背後地の人びとの開門に対する複雑な思いを解消するためにも、干拓事業に依存しない本格的な防災と利水の実現は避けて通れない課題である

3 実りある対話実現のための課題と提言

  以上をふまえた、実りある対話実現のために課題は次のとおりであると考える。

(1) 農・漁・防災共存の開門という目標を明確にすること。
(2) 福岡高裁確定判決が認定した漁業被害や被害と干拓事業の因果関係を潔く認め、防災や農業用水確保に配慮した事前準備の上で、開門と科学的開門調査を実施すること。
(3) 干拓事業に依存しない本格的な防災、農業用水の確保を、全国の経験に学びながら実現し、背後地の人びとの積年の願いに真摯に応えること。

 こうした課題に基づき、国は、対話が円滑に進むためのたたき台としての具体策を、早急に関係者に示すべきである。
 深刻な漁業被害に苦しむ漁民と防災・農業用水に対する切実な願いを有する住民・農業者の双方がいる長崎県、諫早市、雲仙市などの関係自治体は、一方の利害のみに偏ることなく、調整役としての役割を果たすべきである。

以上
  
posted by 後藤富和 at 17:24| 有明海

2014年01月11日

諫早干拓をめぐる国の姿勢

 10日付佐賀新聞は一面トップで、国営諫早湾干拓事業の開門差し止めを認めた長崎地裁の仮処分決定に対し、農林水産省が9日に異議を申し立て、同時に漁業者らが開門までの制裁金を求めた「間接強制」への対抗措置として、「請求異議」の訴えを佐賀地裁に起こした、ことを伝えています。その中で「方針なき無責任対応」の見出しの大鋸宏信記者の解説記事が光を放っています。全文を紹介したいと思います。
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 国が行った二つの「異議」は、有明海をめぐる諍(いさか)いを引き起こした責任者として主体的に開門の是非を判断することなく、解決に向けた明確な方針を示さない「窮余の策」で、いたずらに混乱を長期化させる無責任な対応と言わざるを得ない。  国の主張は、福岡高裁の開門判決に従わなかったための制裁金について「地元の反対で対策工事ができず、開門禁止の仮処分も出るなど事情が変わったから勘弁して」、開門差し止めの長崎地裁仮処分には「対策工事なしの開門はしないから、農業被害は出ないので大丈夫」というもの。開門する、しないの判断は示さずに漁業者、営農者双方の不信感をさらに高めた。  佐賀県の漁業者ら開門派の原告弁護団や県関係者も、仮処分に異議を申し立てるよう求めていた。ただ、今回の国の対応は形式的には異議の申し立てだが、内容は従来の主張を踏襲しているだけで、これまで国が主張しなかった排水門閉め切りによる漁業被害を認めない方針は変えていない。漁業者が求める「異議」とは本質的に異なる。  さらに、請求異議は新たな訴訟であり、最高裁まで問題が長期化する懸念は強い。仮に最高裁で国が勝訴しても、強制執行を止めるだけで確定判決の開門命令の効力が消える訳ではない。  国は相反する二つの法的義務について「裁判で矛盾解消の判断を求める」とする。本気で矛盾解消を目指すなら、開門差し止めの仮処分を覆さない限り、根本的な解決にはつながらない。国がやるべきは当事者の不信を高める対応でなく、従来の姿勢を改め、真の解決に向けた誠意を尽くす努力以外にあり得ない。(大鋸宏信)
posted by 後藤富和 at 09:52| 有明海

2013年12月24日

【漁民・市民ネット】開門確定判決の不履行に対する抗議声明

【漁民・市民ネット】開門確定判決の不履行に対する抗議声明

 諫早湾潮受け堤防排水門の常時開放を求めた福岡高裁確定判決の履行期限を過ぎ、国が確定判決を履行しないという憲政史上例がない異常事態が現実となってしまった。法秩序を無視した国の傲慢な姿勢に対して、ここに強く抗議する。
 判決確定からの3年間、農水省は、長崎県などの理解が得られないことを口実に開門準備をサボタージュする一方、開門差し止め訴訟において、開門に反対する原告弁護団や長崎地裁と「出来レース」を演じ、福岡高裁の判決とは相反する仮処分の決定が下されるように画策してきた。そして今、「二つの法的義務」に板挟みとなり苦悩しているフリをしながら、着々と開門断念へと進もうとしている。本来、国は、開門差し止めの訴訟に対しては、法秩序を守る立場からこれを門前払いにすることを主張して争うべきであったが、あろうことか確定判決が認めた漁業被害をも認めないという不遜な態度で、開門差し止めに協力してきた。
 開門によって被害が出るという主張は、長年にわたる開門訴訟を通じて議論を戦わせてきたものであり、対策を施すことで農業と漁業は共存できるという結論で争いに終止符を打ったはずである。この結論は司法の場で決着したものであり、これを覆そうという長崎県などの脱法的言動は、民主主義に対する挑戦である。これを許した長崎地裁の決定も言語道断だが、何よりも今日の混乱の一番の責任は農水省にある。差し止め仮処分においても、国のサボタージュが決定理由になっているに過ぎず、開門を求めた確定判決とは何ら矛盾しない。要は、国が開門の準備を直ちに始めることである。長崎県の理解が法的義務に優先するなどということが罷り通るなら、民主主義社会は成り立たない。
 有明海は、本当に瀕死の状態にあり、特に漁船漁業は生活が成り立たないほどに疲弊している。タイラギをはじめとする魚種が絶滅の危機にあり、生活苦による自殺者も後を絶たず、有明海再生には不可欠である諫早湾の開門は一刻の猶予も許されない。長崎県などが主張する「開門に伴う被害」は対策で克服することができる一方、有明海で今起こっている被害は諫早湾の開門なしには解消することができないのである。問題の解決を困難にしているのは、今日の混乱をもたらしたことへの反省と謝罪をしない国の不誠実な態度にある。内閣全体の責任として、確定判決を履行できなかったことを謝罪し、開門を一日も早く実現することを強く要求する。

2013年12月24日

有明海漁民・市民ネットワーク

posted by 後藤富和 at 15:24| 有明海

【声明】間接強制の申立について

【声明】間接強制の申立について

2013年12月24日
よみがえれ!有明訴訟弁護団

 本日,福岡高裁開門判決に基づき佐賀地裁に間接強制を申し立てた。
 同判決は,3年の猶予期間内に準備工事を行った上で,5年間の潮受堤防南北排水門開放を命じるものであった。この5年間のうちに,いわゆる開門調査が実施されることを前提としている。本年12月20日をもって,猶予期間が経過したが,同判決の開門義務は履行されないままである。
 すでに1997年4月の潮受堤防締切り以来,16年以上の月日が経過した。この間,有明海漁民は,不漁に苦しみ続けてきた。多くの漁民が,生業としてきた漁業をあきらめ,その結果,漁協の組合員数は激減し,漁業によって支えられてきた地域社会は疲弊した。多額の借金に苦しみながらみずから命を絶った漁民も少なくない。開門と開門調査は有明海漁民の悲願であり,福岡高裁開門判決は,有明海漁民にとって,かけがえのない希望の光である。国は,長期にわたって有明海異変の主犯である干拓事業を不問に付したエセ再生事業によって批判をかわそうとしてきたが,干拓事業を不問に付したままの場当たり的エセ再生事業に有明海再生の未来がないことは,現に継続する有明海漁業の深刻な実態が雄弁に物語っている。開門と関門調査なくして,真の有明海再生・宝の海復活はありえない。
 しかるに国は,判決主文には従うが,主文の根拠となった裁判所の判断には従わないなどという不遜な態度に終始し,判決が指摘した潮受堤防締切りによる漁業被害の発生を否定し続けてきた。わたしたちが農・魚・防災共存の開門を粘り強く訴えてきたにもかかわらず,地元長崎の反対を口実に開門事前工事をサボタージュし続けてきた。最近では,いわゆる開門阻止仮処分を根拠に開門義務の不履行そのものを正当化しようとしている。開門阻止仮処分が福岡高裁開門確定判決と矛盾するものではないことは,わたしたちがつとに指摘してきたとおりである。国の無策とサボタージュは意図的と言っても過言ではない。
 国が確定判決を守らないなどという三権分立と法治国家の原則を否定し去る憲政史上前代未聞の事態は,有明海のみならず,この国の民主主義の将来そのものを危うくするものであり,到底,看過できるものではない。
 以上の次第で,本日,わたしたちは間接強制の申立を行った。
 間接強制によって国が支払う金員については,漁民とも協議の上,有明海を再生し,宝の海を取り戻すための調査・研究・運動の基金として管理する所存である。
posted by 後藤富和 at 14:46| 有明海

よみがえれ!有明訴訟・間接強制申立

有明海の再生に取り組む私達の同志である大串博志衆議院議員(民主党)。
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タイラギ潜水漁師の平方宣清さん。
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長崎県島原市の漁師吉田訓啓さん。「南総」以来の諫早湾干拓事業を巡る長く苦しい戦いを語っています。
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今の有明海が死の海になっていて、今年最後の漁がわずか魚15匹で終わったこと。
来年どうやって生活すれば良いのか、苦しさをにじませる長崎県の漁業者中田猶喜さん。
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佐賀のノリ養殖漁師の川崎賢朗さん。
長崎県諫早市小長井町の漁師松永秀則さん。
長崎県瑞穂漁協組合長の石田徳春さん。
熊本県横島漁協組合長の中尾さん。
熊本県河内漁協の木村さん。
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皆さん、宝の海有明海の再生、農漁共存の地域繁栄を訴えています。
木村さん「堪忍袋の緒が切れた!」

これから漁民達とともに佐賀地裁に間接強制を申し立てます。
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posted by 後藤富和 at 14:24| 有明海

【日弁連】諫早湾干拓事業の排水門の開放に関する会長談話

【日弁連】諫早湾干拓事業の排水門の開放に関する会長談話

福岡高等裁判所は、2010年12月6日、国に対し、諫早湾干拓事業(以下「本件事業」という。)で建設された潮受け堤防の南北各排水門について開放(以下「開門」という。)することを命じる判決を言い渡した。この判決においては、国が農業者等の利害関係者に被害が生じないような対策を行うために、判決確定から3年間の猶予期間が認められていた。しかし、国はその履行期限である2013年12月20日までに、その対策を怠ったため、開門することができなかった。

本件事業については、開門による被害を訴えた農業者らの申立てを受け、長崎地方裁判所が2013年11月12日に開門を差し止める仮処分決定を出しているが、かかる決定がなされたのは、国がその手続の中で、上記福岡高裁の判断の基礎となった、開門しないことによる漁業行使権侵害の事実を主張しなかったこと等による。そもそもこのような混乱した状況は、国が、自ら主張し、認められた最大の期間である3年間の猶予期間を有効に使わず、農業者等に対する被害対策を怠ったことにより生じたものであって、漁業と農業を共存させるという農林水産省の本来の職責を果たしていないからに他ならない。

当連合会は、諫早干潟の貴重で自然的な価値を評価するとともに、「宝の海」と呼ばれ、生物多様性に富んだ有明海に、本件事業後、「有明海異変」と呼ばれる環境の悪化が発生したことを踏まえて、本件事業に関し、これまで意見を述べ続けてきた。すなわち、1997年5月以降、2度にわたる意見書及び7度にわたる会長声明(会長談話)を発表して、排水門を開放し堤防内に海水を導入することや、中・長期開門調査の実施を求めてきた。さらに、福岡高裁判決に際して、ただちに開門するための準備に着手することも求めてきたところである。

当連合会は、国に対して、漁業と農業の共存を可能とするよう農業者に対する十分な対策を実施するなど、開門に向けてあらゆる手段を講じ、有明海再生のために第一歩を踏み出すことを強く求めるものである。

2013年(平成25年)12月24日
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司

http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/131224.html
posted by 後藤富和 at 13:21| 有明海

【日本魚類学会、日本生態学会、日本鳥学会 、日本ベントス学会】有明海奥部の貴重な生物相と生態系機能を保全する見地から諫早湾の潮受け堤防の排水門開放を求める要望書

有明海奥部の貴重な生物相と生態系機能を保全する見地から諫早湾の潮受け堤防の排水門開放を求める要望書

今から約17年前(1997年4月14日)、有明海の奥部に位置する諌早湾(約100 km2)において、湾奥部36 km2(このうち29 km2が大潮時に干出する干潟)を全長7 kmの潮受け堤防で完全に閉め切る「潮止め」が実施されました。これにより有明海の全干潟の12%(日本の全干潟の6%)が一度に失われました。この大規模干拓事業の目的は、当初は水田のための農地造成でしたが、後に、水田が畑作地に変更され、また、新たな目的として高潮対策などの「防災」が追加されました。
この事業の大きな問題の一つは、干拓によって失われる干潟生態系の重要性がほとんど無視された点にあります。これまでに生物学の基礎研究は、陸と海のはざまに位置する干潟の生態学的な重要性を明らかにしてきました。まず、干潟の生態系は、その高い生物生産力によって、豊富な水産資源を生み出すと同時に、陸から海に流入する栄養物質(窒素やリンなど)の多くを吸収、除去する機能(水質浄化機能)がたいへん大きいことがわかっています。また、そこは、魚介類の産卵・生育の場所としても重要であることがわかっています。さらに、有明海奥部の干潟とそれに続く浅海域は、絶滅が危惧される多くの生物種がまとまって生き残っているきわめてまれな場所であることも重要です。すなわち、諫早湾を含む有明海奥部は、東京湾をはじめとする日本中の内湾が失ってしまった本来の生物相とそれに支えられた高い生産力が最もよく残っている場所なのです。国際的な合意事項である生物多様性保全という観点からは、この海域は、日本の沿岸海域の中で最も保全が重要な「生物多様性のホットスポット」と言えます。
諫早湾干拓事業は、このような有明海奥部の貴重な生物相と生態系機能を大きく損ねてしまうことが当初から懸念されていました。実際に、諫早湾の閉め切り以降、有明海奥部では、大規模な赤潮が頻発するようになり、夏場の海底の貧酸素化も顕著になっています。少なくとも諫早湾内(潮受け堤防の外側)においては、諫早湾の閉め切りが潮流を著しく減衰させたことが明らかになっており、それが赤潮の頻発や海底の貧酸素化を促進していると考えられます。それらの知見に基づいて、生物学の研究者組織(日本魚類学会、日本生態学会、日本鳥学会、日本ベントス学会など)は、1997年から2012年にかけて、同事業の中止・中断、諌早湾の原状復帰、あるいは長期開門調査の早期実施などを求める要望書を合計6件、日本政府や地元自治体に提出してきました(添付資料のとおり)。しかし、これらの要望は無視され、事業が進み、今日に至っています。これまでの要望書の中で危惧された問題は、増々深刻なものになりつつあります。
2010年12月の福岡高等裁判所による確定判決は、諫早湾干拓事業と諫早湾内の漁業被害(大型底生二枚貝のタイラギを対象とした漁業等)の因果関係を認め、「諫早湾の潮受け堤防の排水門の5年間開放」を2013年12月20日までに実施するよう国に命じました。この確定判決は、現在の漁業者の危機的状況を救済するために諫早湾の環境復元を求めています。そのことは、長期的な視点に立って豊かな漁業を支える基礎としての生態系の保全を求めてきたこれまでの私たちの要望に合致するものです。
一方、2013年11月には、長崎地方裁判所が、干拓地に入植した営農者に対する影響などを考慮し、「排水門の開放」を差し止める仮処分を決定しました。しかし、この決定には、「排水門の開放」を差し止めた場合の有明海の環境悪化やそれに伴う漁業被害が全く考慮されていません。有明海の自然の再生を目標に据えた上で、有明海の漁業と干拓地の農業のあり方を総合的に議論する必要があります。
有明海奥部における環境悪化の進行は、この海域に残されている生物多様性とそれに支えられた漁業を崩壊させてしまう恐れがあります。たとえば、有明海奥部での漁獲対象物であるウミタケ、アゲマキ、ハイガイなどは、いずれも絶滅が危惧される種であり(日本ベントス学会 2012)、国内では、有明海奥部以外には大きな個体群はもはや存在しません。これらの種の絶滅の危機を回避し、漁業の基盤を維持するためには、一刻も早い諫早湾の環境復元とそれによる諫早湾の干潟生態系の再生が望まれます。
以上のことから、私たちは、日本政府に対して、次のことを要望します。
) 有明海奥部に残されている貴重な生物相と生態系機能を保全するために、福岡高裁の確定判決に従って、すみやかに「諫早湾の潮受け堤防の排水門の開放」を実施し、諫早湾の干潟生態系の再生を実現させること。
) 福岡高裁が命じた5年間の「排水門の開放」の間に、諫早湾干拓事業が有明海奥部の広い範囲に環境悪化と漁業不振をもたらしている可能性を検証するため、適正な調査を実施し、それに基づいて、諫早湾の長期的な自然再生を含む新たな有明海の環境保全策を検討すること。
以上。

2013年12月20日

日本魚類学会 会長 木村清志
日本生態学会 自然保護専門委員会 委員長 矢原徹一
日本鳥学会 鳥類保護委員会 委員長 大迫義人
日本ベントス学会 自然環境保全委員会 委員長 佐藤正典
posted by 後藤富和 at 13:11| 有明海

【ラムネット、環境法律家連盟】諫早干拓・開門の不履行に対して強く抗議する

諫早干拓・開門の不履行に対して強く抗議する

我々は、内閣総理大臣および農林水産大臣が、福岡高裁の確定判決を遵守せず、国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の常時開放(開門)を12月20日の期限が過ぎたにもかかわらず実行しないことに対して、強く抗議する。
確定判決を国が守らないことは法秩序の崩壊であり、法治国家として前代未聞の異常事態である。民主主義国において、あってはならないことである。
我々は、国が確定判決に従って早急に開門の道筋をつくり、実際に開門を行って有明海の潮流・潮汐をとりもどし、自然環境の再生と漁業資源の回復、漁業者の生活再建、干拓地農業との共存を実現することを、強く要求する。

福岡高裁の確定判決は、多くの漁民の証言や科学者の研究結果にもとづいて、諫早湾干拓事業と有明海漁業被害の因果関係を認め、被害回復のために3年間の準備期間と5年間の水門の常時開放(開門)を命じたものである。
しかし、農水省は、3年の間に利害関係者の合意を得ることができず、開門準備工事も一切行わないという状況であった。これは、開門を阻みたいという農水省のサボタージュであり、確定判決に不誠実な対応をとり続けた結果であり、その責任は極めて重大である。
一方、長崎県知事は、県知事として県民の利害関係の調整をまったく行わず、開門阻止のみを強調して農水大臣や佐賀県知事との話し合いも拒否するなど、確定判決をないがしろにする態度をとり続けており、これでは知事の職責を果たすことは不可能である。
総理大臣および農水大臣は、国会では「確定判決を遵守する」と答弁しながら、農水官僚および長崎県という行政機関の「確定判決を遵守しない脱法行為」に対して、何ら対応せず、責任も取っていない。これでは、司法、立法、行政という国の根幹が崩壊しつつあると言わざるを得ない。
長崎地裁の開門を認めないという仮処分は、農水省が漁業被害を認めず、開門準備工事をサボタージュしたことが原因であり、準備工事により湛水被害の防止や農業用水の確保ができれば、仮処分問題は解決するはずである。
我々は、国が確定判決を遵守し、利害関係者の合意を得て早急に道筋をつけ、水門の常時開放(開門)を実行し、自然環境の再生と漁業資源の回復、漁業者の生活再建、干拓地農業との共存を実現することを、強く要求する。

2013年12月24日

NPO法人 ラムサール・ネットワーク日本
日本環境法律家連盟
posted by 後藤富和 at 13:05| 有明海