2014年04月04日

井手先生講演

日中文化講座「建国65周年の中国をどう見るか」講師井手啓二先生(長崎大学名誉教授)に参加しました(福岡市人権啓発センター)。

わが国では中国を国家資本主義だと評価する考えが多数。
でも、評価は定まっていない。社会主義に向かう資本主義か、資本主義に向かう社会主義か。封建的社会主義という言葉もある。

ソ連の失敗はそもそもマルクス主義に問題があったことを見事に表した。
100年経っても社会主義は無理。ましてや中国で社会主義を実現しようとするならば何百年もかかるだろう。
アメリカで黒人が法的に対等に扱われるまでに建国から200年かかった。日本も明治維新から70年経ってようやく民主主義を受け入れたが今でも真の民主主義とはいえない。

中国に1党制を導入したのは国民党。中国共産党は反対していた。
中国共産党は8600万人も党員がいて意見が一つなわけがない。かつての自民党も様々な意見を持つ者が集まっていた。中国共産党の中には右翼も左翼もいていろいろな立場がいる。政権党なので党員になった方が好都合だから。
中国を見る時、政府と一般国民を区別しなければならない。
中国の政府やマスコミが言ったからといって中国国民が同じ意見かといえば違う。

中国人の大部分は尖閣問題なんて知らないし関心もない。
ただ、大学の教師などが尖閣は日本のものだなど言ったら首になる。戦前の日本と同じ。

2012年11月に18回党大会。2013年11月に18期3中全会では改革の全面的進化方針を打ち出した。
今年、全人代が開かれた。
プロセスは民主的だが、限られた人。また代表の選ばれ方も問題。
ただ、日本のように直接選ぶと人気者投票になる。
アングロサクソン系の二大政党制は偏っている。
中国共産党は自民党やシンガポールの人民行動党を高く評価している。多党制の中での長期政権ということで。

中国は大きい物や早いことを好み、大きな建物をあっという間に完成させたりするが、仕上げが雑だったりする。日本の職人的な細かさ丁寧さはまだない。

1978年-1991年、第1期の改革開放
1992年-93年の14期3中全会で、社会主義市場経済の方針を決めた。
1992年-2000年、第2期改革解放。
2001年-2011年、第3期。
2012年-第4期

今回は1992年からの第2期改革に次ぐ大きな変革。
危機に迫られた改革という側面もある。1992年からの路線(和諧社会の実現)が壁にぶつかった。

日本では社会保障は所得再分配という位置づけ。中国では格差拡大になっている。

中国では課長クラスでも運転手付きの自動車が与えられる。日本からすると常識はずれだが、そういう文化。ランクの高い自動車、広い家に住むことで地位を示す。良い悪いではなく、それが中国の文化。

7.5%以上の経済成長を続けているが、減速してきている。今年は7.5%を下回るだろう。リーマンショック対策の時の債務、過剰生産能力のメカニズム。各地方政府が生産能力を競っている。その財源を土地の売却に依存している。住宅バブル、地方債務の拡大、シャドーバンキング、利財商品。危ない。
都市部において1000万人の就業を保障できるか。

改革を進め近代化を進めて行っている。

目指すべきは質と効率の持続可能な発展。今はバランスが取れていない。自動車を持つことが一人前になるシンボルとなっているが、渋滞や大気汚染を生み出している。公共交通機関を整備する方向に向かない。

小規模事業は私的所有。大規模事業は共同保有。この方針は正しいのではないか。

自由と民主主義は発展している。

中国が大国主義になる。そういう国とどう付き合って行くか。日本の6倍、アメリカの2倍の国にすぐになる。

習近平をはじめ今の中国の政治家の多くは若い頃に下放されて貧しい農村の実情を知っている。習近平はとても能力が高いと思われる。
posted by 後藤富和 at 23:56| 平和