2014年03月01日

空襲下で禁じられた避難

友人である大前治君が水島朝穂教授と共同で執筆した本「検証 防空法 空襲下で禁じられた避難」を興味深く読んでいます。
一昨日のNHK連続小説「ごちそうさん」で主人公の夫で大阪市役所勤務の西門悠太郎さんが、逮捕されました。防火訓練の際、焼夷弾の炎はバケツ程度で消せるようなもんと違う。火が迫ってきたら消そうとせず逃げろ。街や建物は人を守るためにあるんであって、人が街や建物の犠牲になるのはおかしい。といった発言が防空法に違反するとして特高警察に引っ張られて行きました。
焼夷弾で街を焼かれるということが普通の火事とは全然違うということを僕は「火の雨が降る」というアニメを観るまでよく分かっていませんでした(このアニメ、音楽はしっくり来ません)。100軒の家が燃えるということが1軒の家が燃えることの100倍ではなく、火災旋風や輻射熱によって、街全体がフライパンで焼かれるような状況になるということを理解できていませんでした。
昨年公開された映画「少年H」の神戸空襲のシーンは観ているだけで恐ろしいものです。
到底、人力で消せるようなものではないのに、国はなぜ消火を命じたのか。それだけでなく避難することを禁じたのか。
青森を例に取ると、青森市民は昭和20年7月14日の青森駅周辺や青函連絡船への爆撃で、空襲の恐ろしさを痛感し、その上、次回の空襲予告のビラまで撒かれ、多くが郊外に避難したそうです(数日中にあなたとあなたの家族、そして財産全てを焼き尽くすと予告されてるんですから当たり前ですよね)。これに対して青森県知事は、市民に対して7月28日までに市内に戻ることを命じ、戻らないと町会台帳から削除する(つまり食料を含む一切の配給を停止する)と通告を出します。配給がないということは一家の飢え死にを意味するし、町会台帳からの削除は「非国民」の汚名を着せられることとなります。そこで、やむなく市民は7月28日までに市内に戻りました。そして、7月28日夜、約100機のB29が飛来し青森市を焼き尽くします。多くの市民が犠牲になりました。
なぜ、県知事は避難していた市民に「逃げるな」「戻れ」と命じたのか、これは防空法によるものです。防空の目的は国家体制の防護にあり、国民の生命財産の保護はその反射にすぎません。「国民防空は…国民全体が国家と運命を共にすると云う殉国精神に出発しているのでなければならぬ。国民は一人も残らず…棄身となつて我が尊い国家を護り通すと云う決死の覚悟即ち防空精神を発揮することが何よりも大切である」(実際的防空指導)
その上、隣組制度によって市民を相互監視させ、無意味な訓練(バケツリレー競争など)を反復継続させることで有意味なものと錯覚させました。こうやって警察や国家機関の監視なしでも、一般市民を統制し支配することができました。
しかも、国は、焼夷弾は恐ろしくないとの嘘の情報を徹底します。
こうやって、亡くならなくて良かった多くの市民が空襲の犠牲になりました。

はじめ、大前君は何で70年も前のことを本にしたんだろうと思いましたが、これってまさに今の問題なんだと感じます。
あれだけの大事故を起こし、今も放射性物質を拡散し続けているのに、家に戻れという。戻らない「自主避難者」には「配給」をしない。放射能は恐るに足りんなどと嘘の情報を煽り、アベノミクス、東京オリンピックで国民を浮かれさせ考える力を奪う。
今、安倍政権が掲げている自民党憲法改正草案にはこうあります。
「国民は国と郷土を誇りと気概を持って守り」
先に掲げた「実際的防空指導」の考えとそっくりです。

日本国憲法は、天皇を中心とした国家体制を守る(国体護持)ために個人が犠牲にされた反省から、個人を尊重することに最大限の価値を求めました(憲法13条)。国家のために個人が犠牲になるのは間違っている、個人が幸せになるために国はあるんだという当たり前のことを堂々と述べています。朝ドラの西門悠太郎さんが防空演習で言った言葉は、後の日本国憲法13条そのものです。

それにしても、朝ドラ「ごちそうさん」を見ていると、主人公「め以子」の能天気さに呆れてしまいます。料理にしか興味がなく、時代の流れ、世界の流れを見る気がない。ニコニコしながら割烹着に国防婦人会の襷をかけて出征兵士を見送る。その兵士が行く戦場がどんなところなのか想像をしようとしない。息子が徴兵年齢未満なのに志願することを許し、戦場からの手紙に「実戦部隊に配備された」とあったことを「良かったね」と無邪気に喜ぶ。息子が戦場に配置されたこと、それは死を意味することなのに、フランス料理の修行ができるね程度にしか想像できない。
うちの事務局にこのことを話すと、当時は誰もがそんなもんだったんじゃないですかとのこと。そうかもしれません。でも、それは当時だけのことではなく、今もその状態は続いています。
あれだけはっきりとあなたの息子を戦地に送りますと政治家が言っているのに、私達が唯一彼らにNOを突きつける機会である選挙に行こうともしない。今、20代30代の若いママ達が抱いている幼い子達が、10年後20年後、戦場で人殺しをさせられ、死ななければならないという、情勢を少しかじっただけではっきりと見えてくる未来を見ようともしない。め以子と一緒です。

「検証 防空法 空襲下で禁じられた避難」(水島朝穂・大前治著)オススメです。
posted by 後藤富和 at 14:51| 平和