国の開門義務はいささかも揺るがない
決定が指摘した内容を精査し,すみやかな開門を求める
2013年11月12日
よみがえれ!有明訴訟弁護団
本日,長崎地裁において,開門阻止仮処分の決定が出た。
決定は,「新旧干拓地農業者,漁民,長崎県農業振興公社との関係で,ケース1開門,及び,ケース3−1,3−2開門をしてはならない」というものであり,2010年12月に確定した福岡高裁開門確定判決と矛盾するものとなっている。
紛争の円満妥当な解決を目指す司法の場において,国に相互に矛盾する義務を課して現状を更に混乱させる決定が出たことに対しては,極めて遺憾であると言わざるをえない。有明海漁民の積年の苦難を思うとき,決定に対して,強い憤りを禁じえない。
決定が開門を差し止める根拠は次のようなものである。
この間,国が事前工事の予算措置を講じ,準備を進めてきたケース3−2開門については,新旧干拓地農業者との関係で,事前準備で予定した淡水化工事が工期どおりに行われる蓋然性がないという理由を掲げている。また,漁業者との関係では被害防止対策が十分でないとの理由を掲げている。
ケース1開門,及び,ケース3−1開門を差し止める根拠としては,これらに加えて背後地住民(ケース1開門の場合は43名,ケース3−1開門の場合は38名)について,10年に1度の大雨の場合に湛水被害が発生する蓋然性があり,事前対策は十分でないという理由が加わっている。
しかしながら,重要なことは,今回の決定は,福岡高裁確定判決の効力を失わせるものではなく,国の開門義務はいささかも揺らぐものではないということである。
国は直ちに今回の決定を精査し,事前工事について改善すべきは改善して,開門義務を履行しなければならない。われわれは国に対し,ただちにそれに着手することを求める。
更に言えば,確定判決の効力を失わせるのは,唯一,再審手続でしかない。一方で,確定した開門判決があり,他方で,今後上級審の審理と本案の審理を通じてようやくその内容が確定する仮処分決定があるとき,相反する2つの義務のうち,国が従うべきは開門確定判決である。
諫早湾干拓事業によって設置された潮受堤防排水門の開門と開門調査は,有明海異変とまで言われた深刻な環境破壊のなかで不漁に苦しむ有明海漁民の悲願である。有明海沿岸4県にわたる深刻な環境破壊と漁業被害をもたらした有明海異変は,被害の広域さ,深刻さ,破壊された環境のかけがえのなさにおいて,歴史上希に見る環境破壊であった。不漁のなかで多くの漁民が岡に上がった。自殺に追い込まれた漁民も少なくない。漁業によって成り立っていた地域社会は破壊された。被害はもはや極限状態まで来ている。宝の海・有明海の再生は,文字通りの急務であると言わなければならない。
以上
2013年11月12日
開門阻止仮処分決定に関する声明
posted by 後藤富和 at 17:04| 有明海