2012年02月11日

子が親を思う気持ち

地下鉄赤坂駅から裁判所に向かう階段に設置された読売新聞の広告にこうあります。
「親が子を思う情はいつの世にも、『永遠の片思い』であるという。片思いに応えられる年齢になったとき、親はいない。 墓前にたたずめば人は誰もが、「ばか野郎」となじってもらいたい 親不孝な息子であり、娘であろう。」(読売新聞編集手帳)

これを読んで自分の気持ちとピッタリと合う方は多いでしょうが、馴染まない方も多いのではないかと思います。

先日読んだ村山由佳著「放蕩記」は、これとは異なる子の気持ちです。

親に対するこの気持ちは人それぞれですね。

放蕩記の担当編集者の言葉を以下に引用します。
http://renzaburo.jp/shinkan_list/temaemiso/111125_book02.html

「私、実は母親とうまくいっていなくて。どうしても好きになれない」

親しい人からこう告白をうけたら。
あなたなら、どう言葉をかけるでしょうか。

「そうは言っても、血のつながったたった一人のお母さんでしょ。きっといつかお母さんの気持ちもわかるよ」

こんなふうに、言いがちではないでしょうか。

今は無理かもしれないけれど、あなたも母親になったらわかる。そうは言っても似ているところがあるじゃない。お母さんがあなたを生んだ年になれば何か気づくはず――。

一見するとなぐさめの言葉ですが、実は、本当に母親との関係に悩む人には、救いにならないかもしれないのです。

――どうして、好きになれないことを認めてくれないのか。
――いつかうまくやれるということは、今うまくいっていない私は間違っているのか。


『放蕩記』は、そんな複雑な思いを抱える「母の子」たちに、読んでいただきたい作品です。

変貌しつづける女流作家・村山由佳さんが初めて挑んだ、半自伝的小説。
村山さんご自身が長年抱えてこられた実のお母様への複雑な思いと葛藤を、本格文学作品に昇華した、凄まじくも力強いメッセージがこめられた作品です。

離婚暦のある作家、夏帆(38歳)と、専業主婦の母・美紀子(78歳)。強烈すぎる母親の恐怖と呪縛から逃れるようにもがき続けてきた夏帆に、母を赦せる日は訪れるのか――。


刊行をひかえ、周りの方に読んでいただき、気づいたことがありました。

皆さん、自分の家族について、こぞって話をされるのです。
読むことで、忘れていた母や家族との記憶がよみがえったり、今抱えているちょっとした思いを他人に伝えたくなったりする。

村山さんは「書くことで母との関係を見つめなおしたかった」と話してらっしゃいますが、この小説を読んで自分の話をすることで、読者の皆さんの気持ちも整理されるかもしれません。

また、自分にはわからないけれどこんな悩みを抱える人が周りにいる方も、娘の気持ちがわからなくなってきたお母さんにも、ぜひ読んでいただきたい作品です。

しんどい場面も多いですが、最後にはほんっっとうに素晴らしい「救い」が待っています!!
posted by 後藤富和 at 08:59| 日記