2014年01月25日

【諫早湾】開門をめぐる実りある対話を実現するために

よみがえれ!有明訴訟弁護団がこのほど、諫早湾干拓事業潮受け堤防の開門をめぐり対話実現のための提言を発表しましたのでご紹介します。以下提言全文です

―提言―
【開門をめぐる実りある対話を実現するために】
                        2014年1月
                        よみがえれ!有明訴訟弁護団

1 開門をめぐる国の対話呼びかけの現状

  憲政史上初めて国が確定判決を履行しないという前代未聞の事態が発生し、2010年12月に確定した福岡高裁開門判決の履行をめぐって混乱状態が続いている。 
  そのなかで、国は、干拓事業の行われた長崎県、漁業被害に苦しむ漁民がいる佐賀、福岡、熊本の有明海沿岸自治体と、福岡高裁開門確定判決の当事者である原告団・弁護団、開門に反対する干拓地・背後地農民、背後地市民ら各関係者に対話を呼びかけている。
  しかしながら、長崎県知事を先頭に、干拓地・背後地農民と背後地市民らは、開門を前提とした協議には一切応じないとする頑固な態度を取り続け、他方、国は抽象的に対話を呼びかけるだけで、各関係者の利害調整の具体策を示さないため、現状では、実りある対話が実現する見通しはない。
  背後地の人びとは、長年にわたり、防災や農業用水に関する質実な願いはすべて干拓事業によって実現するという国の方針を信頼してきたため、開門に対して感情的な反発すら抱いている。こうした想いに対して、国はなんら有効な対応策を示していない。
  また国は、確定した福岡高裁開門判決の勝訴原告・弁護団である私たちに対しても、確定判決に拘束されるのは主文のみだと言い放ち、主文を導き出す根拠となった漁業被害や被害と事業の因果関係など福岡交際が判決主文を導き出した肝心の理由については、これを認めないという不遜な態度に終始し、私たちとの信頼関係を損なってきた。

2 調整すべき各当事者の利害関係

(1)  2003年12月のノリ第三者委員会による開門調査の提言依頼、開門と開門調査の実現は、深刻な漁業被害に苦しむ有明海漁民の悲願であった。漁民は、長期化する不漁のなかで、家庭を破壊され、生業であった漁業を諦め、自殺に追い込まれるなどの被害を余儀なくされている。漁業を基盤とする地域社会も大きな痛手を被り、疲弊している。円滑な開門と科学的な開門調査の実施は、漁民にとって譲れない課題である。
(2)  また、昭和32年の諫早大水害をはじめとする災害の歴史的経緯のなか、干拓地背後地の人びとは、防災に対する強い願いがある。また、背後地農民は十分な利水計画が立てられないまま、長く農業用水確保に苦しんできた。こうした防災と農業用水に対する背後地の要求は、1982年に現在の干拓事業構想が浮上して以来、すべての干拓事業によって解決するものとされてきた。そのため、湛水被害解消のための排水機場の設置などは、それ以来、長く見送られてきた。防災と農業用水の確保は、これらの人びとの切実な願いであり、それをないがしろにした利害調整と対話はありえないところである。
(3)  私たちは、開門訴訟の過程で、防災や背後地の利水を干拓事業によってまかなうのは、全国的にも例がなく、誤りであることを指摘してきた。確定した福岡高裁確定判決もまた、干拓事業による防災効果は限定的であることを確定している。防災や利水は、本来、全国の経験に学びながら、独自の課題として本格的になされるべきである。防災や利水の要求はすべて干拓事業によって実現するという国の方針に従ってきた背後地の人びとの開門に対する複雑な思いを解消するためにも、干拓事業に依存しない本格的な防災と利水の実現は避けて通れない課題である

3 実りある対話実現のための課題と提言

  以上をふまえた、実りある対話実現のために課題は次のとおりであると考える。

(1) 農・漁・防災共存の開門という目標を明確にすること。
(2) 福岡高裁確定判決が認定した漁業被害や被害と干拓事業の因果関係を潔く認め、防災や農業用水確保に配慮した事前準備の上で、開門と科学的開門調査を実施すること。
(3) 干拓事業に依存しない本格的な防災、農業用水の確保を、全国の経験に学びながら実現し、背後地の人びとの積年の願いに真摯に応えること。

 こうした課題に基づき、国は、対話が円滑に進むためのたたき台としての具体策を、早急に関係者に示すべきである。
 深刻な漁業被害に苦しむ漁民と防災・農業用水に対する切実な願いを有する住民・農業者の双方がいる長崎県、諫早市、雲仙市などの関係自治体は、一方の利害のみに偏ることなく、調整役としての役割を果たすべきである。

以上
  
posted by 後藤富和 at 17:24| 有明海