コーディネーター
・日比野敏陽(日本新聞労連委員長)
パネリスト
・西山太吉(ジャーナリスト、元毎日新聞記者)
・石村善次(九条の会福岡県連絡会代表世話人、福岡大学名誉教授)
・武藤糾明(弁護士)
・岩崎貞明(放送レポート編集長)
・坂本信博(西日本新聞東京支社報道部)
(日比野)与党は止まらない暴走機関車と化している。
(武藤)行政権が国会、裁判所を支配することが可能となる。法案では、行政機関が条件を満たしているものと認めた場合に、特定秘密を国会に提供するとなっている。つまり、行政機関の裁量で提供しないことが可能となる。政府が、国権の最高機関である国会を情報面で完全に掌握することになる。つまり国会自殺法案。これを与党の議員は分かっているのか。与党議員は官僚を疑うこともしないが、官僚を信頼しきっている国会なんかいらない。裁判では、どのような行為が秘密保護法に該当して処罰されるのかさえ、被告人、弁護人にすら告げられない。弁護のしようがない。こんなものがなぜ右から左にすぐ通ってしまうのか。
(石村)ドイツでは憲法違反の秘密は暴露しても処罰されない、つまり憲法違反の秘密は秘密ではないことが規定されている。2007年に、麻生外相と額賀防衛相がアメリカと結んだ軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の中で、すでに秘密保護法の制定を約束していた。2007年、ドイツ連邦憲法裁判所は、ジャーナリストが秘密情報を受領、評価、公表のために秘密にアクセスすることは処罰されないと判示した。日本はこのようなことがないまま、遮二無二、秘密保護法の制定を急いでいる。
(坂本)特定秘密保護法案では、秘密の範囲をどれだけでも広げられるような文言になっている。政府はなぜか法の成立を急いでいる。9月にはじめて法案を明らかにし、わずか15日でパブコメを締め切った。そしてパブコメは全く法案に反映されなかった。衆議院では修正案の審議はわずか2時間しかされていない。事実上の強行採決。今、参議院で審議が始まっているが、与党は会期末の12/6に成立させると言っている。しかし、その与党議員自身、法案の勉強をしていない。そうなると官僚からレクチャーを受けることになるが、この法案で得をするのは官僚なので、いいことしか言わない。安倍総理に急かされるように十分な審議のないまま成立に向かっている。
(岩崎)情報を漏らした側だけでなく、情報をもらった側(記者など)も捜査の対象になる。その捜査の過程で、国は記者が持っている情報をごっそり持って行くことができる。それは記者だけでなく一般人も。しかも、自分が何をしたから処罰されるのかさえ分からない。暗黒社会。NHKは、法案の何が問題かを伝えない。しかも、国会中継をほとんどやらなかった。最終日だけ放送したが、採決の前に中継を打ち切った。NHKの体たらく。安倍総理はメディアの社長と食事を繰り返している。この夏、自民党はTBSだけ取材拒否措置をしたが、ここ最近、大手メディアで安倍総理から食事に呼ばれていないのはTBSだけ。
(西山)今のメディアの首脳部に見識、問題意識が欠落しているような印象を受ける。以前は、メディアは、第三の権力としてのプライド、ディグニティを持っていた。このままだとメディアは大本営発表になってしまうのに、特定秘密保護法案に対するスタンスでメディアが分裂している。一部メディアが腰砕けになっている。
(武藤)明らかに憲法違反だと思う。大事なのは、この国に、アメリカやEUのような民主主義国家としての矜恃があるか。国民の側に、国に任せておけばなんとかなるというお任せ民主主義の意識があることが問題。良い殿様に任せておけば大丈夫、その殿様が悪ければ変えればいいとして、自分自身は深く考えない。その結果、耳障りのいいことをいう政治家が通り、首相はコロコロと変わる。そうなると力を持つのは官僚。主権者としての自負がない。弁護士会は、民主主義や人権、特定秘密保護法案の問題点などについて意見を述べているが、それを国民に伝え切れていないのが問題。
(石村)1966年の博多駅テレビフィルム事件最高裁判決で、国民の知る権利に奉仕する報道機関の役割の重要性を明確に指摘した。報道機関には国民の知る権利に奉仕するという役割をもう一度見つめ直して、特定秘密保護法案反対に頑張ってほしい。
(坂本)与党議員と話をすると、これが(特定秘密保護法が通ってしまうことが)選挙で選ばれたということというが、選挙の時には公約にすらしていない。国民の批判が高まっていることについて、ある与党議員は「この問題は国民の意見を聞くようなものじゃないんだ」と言って、冷ややかに見ている。
(岩崎)近年最大のスクープは、琉球新報の「日米地位協定の考え方」だと思うが、本土のメディアはどこもこれを取り上げていなかった。安倍総理のメディア取り込みは顕著。第1次安倍政権の時、わずか1年の間に、総務省からメディアに対して8件も行政指導を出している。異常な数。第2次安倍政権では、メディアに対する行政指導はしていないが、それは安倍総理がメディアに甘くなったのではなく、今年がメディアの一斉免許更新(再免許)の年だから、指導をせずとも、安倍政権に批判的な報道ができなくなっているからではないか。
(日比野)日本のように政府が免許を与えるという方式をとっているのは、ロシア、北朝鮮、中国。これ自体が政府による情報統制として大きな問題。
(西山)安倍内閣の権力集中が進んでいることについてマスコミの指摘が弱い。個別の事象は報道するが、一番大事な全体の流れを解説しない。権力集中、独裁国家に必ずついてくるのが情報の管理(秘密の保全)。権力集中と情報管理は一体となって進んで独裁国家に向かう。安倍総理は祖父である岸信介を目指している。安倍総理は、自分が具現したい憲法改正、集団的自衛権、反共教条主義を実現するために法を作って統制する。これは岸がとってきた手法。価値観外交(イデオロギー外交。価値観を共にするものとだけ手を結び価値観が異なるものを包囲するという手法)を実現するため。
(武藤)行政に刃向かう者は非国民のレッテルを貼られる。脱原発の運動をやる人達はテロリストに認定されてしまうことになる。政府の政策に集団で反対する者達はテロリストとして犯罪者となる。そして、その人達を監視することが国の重要な政策となる。だからテロ防止は特定秘密になる。脱原発デモを公安がビデオに撮っているが、それを出せということ自体が特定秘密保護法違反となる。日弁連も明確に指摘している。石破氏が、デモで要求を絶叫することはテロと本質的に変わらないというブログで語っているが、まさに本音が出ている。この国の民主主義が壊れていくことが心配でならない。治安維持法よりももっと悪い。僕なんかは真っ先に逮捕されるだろう。これを伝えることが報道機関の正しい姿勢ではないか。これを報道しないのは大本営発表と同じじゃないか。
(岩崎)原発、放射能被害は秘密になるかどうかと言われているが、現状ですでに秘密でしょう。適正評価制度も、すでに霞が関で行われている。秘密保護法が通ると、これに正当性を与えてしまうということ。
(石村)声をあげること。もし法が通ってしまっても憲法違反を争うべきだ。
2013年11月30日
特定秘密保護法を考えるシンポジウム【第2部パネルディスカッション】
posted by 後藤富和 at 16:20| 平和
特定秘密保護法を考えるシンポジウム【第1部】
「特定秘密保護法を考えるシンポジウム」(福岡マスコミ文化情報労働組合共闘会議、日本ジャーナリスト会議福岡支部主催)に参加しています
第1部 基調講演(講師西山太吉氏)←あの外務省秘密漏洩事件で沖縄密約をスクープした「西山記者」です(山崎豊子のドラマ「運命の人」では本木雅弘が西山記者を演じました)。
特定秘密保護法案の最大の問題は、特定秘密がどのようにして作られて行くのか。現在の内閣が狙っているのは、日米安全保障体制における交渉の内容や合意事項、それと密接な関係がある防衛問題を、国民の目に触れさせないこと。
際限なく無限に秘密が広がっていく。
自衛隊の運用、計画、研究も特定秘密になる。つまり自衛隊のすべての事項が秘密の対象になる。文民統制(シビリアンコントロール)のもとでは自衛隊の情報は正確に主権者に伝達されなければならないのに、すべての事項が秘密になりうる。
外交については、外国及び国際機関と日本が行う外交交渉、協力関係の内容は特定秘密となる。つまり、外交の内容が包括的に秘密になる。
外交交渉のプロセスを逐一国民に公表する必要はないとは思うが、そこにどんなアクセス(取材)をしようが自由なはず。そして、結論が出た場合は100%国民に正確に伝達しなければならない。
佐藤内閣の時の沖縄密約(核持ち込み容認、5億3000万ドルの支払い、思いやり予算の源流)。政治家すら知らない。
特定秘密保護法案では、外交の結果すら秘密にできる。恐るべきこと。
特定秘密を作るのは誰か。秘密を漏らさないか適性検査をうける。経歴、家族構成、交友関係、借金問題などすべて調べる。こんな人権侵害。こうやって選び抜かれた官僚が特定秘密を作っていく。大臣、政治家はそれを追認するしかない。官僚の傀儡となる。
一度、制度を作ってしまい権限を与えてしまうと、それをどんどん拡張するのが官僚の性質。
特定秘密が適正かどうかのチェック。首相にチェックさせるという意見があるが、首相は秘密を作り出したい張本人。チェック機能が働くわけがない。防衛大臣、外務大臣に委嘱して、結局は官僚の手になる。
第三者機関にチェックというが、政府の政策に従う学者を集めて有識者委員会を作るんだから、チェックが働くわけがない。
60年経ったら公表するなどというが、本来、国の情報は公共のもの。60年経ったら関係者は死んでいる。しかも、公開しない例外も認め永久に秘密にできるようにしている。
政府に都合の悪い情報は永久に隠蔽し、都合の良い情報だけ怒涛のようにリークする。そんなミスリードが行われ、国民はミスジャッジをする。民主主義の空洞化。
全ての分野において、官僚の恣意的判断で秘密が作られて行く。
官僚支配の強化。
チェック機能の保証はない。
永久に秘密にできる。
安倍首相は「知る権利」は保障しますと言うが、それで、マスコミの半分は寝返った。読売新聞、産経新聞、日本テレビ、フジテレビは特定秘密保護法案の問題を全然言わなくなった。反対は大手マスコミでは、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞、テレビ朝日、TBSしかない。
秘密をバラしたら懲役10年なんて、もともと内部告発が起こらない日本の社会で、内部告発はいよいよなくなる。官僚は何も言わなくなる。
特定秘密保護法が動き出したら、外務省が一方的に流すリーク、共同記者会見だけになる。あとは何もない。情報が独占、管理され、操作される。権力の集中、一元化。秘密体制の強化。独裁政権となる。
これまで、こんなに権力の集中、一元化が一気呵成に進むのは見たことがない。
内閣法制局長、内閣人事局、NHK会長、すべて安倍総理の子分を当てた。それと歩調を合わせて秘密を強化。これが完成すると、見事な独裁国会が誕生する。
今、大事なのは秘密の強化ではなく、国家の情報を国民に開示すること。その中で秘密との調整を図るというのが本来の姿。
それなのに、秘密保護法では、情報公開法が空洞化し、秘密の保護だけになる。
こんな法案がたった2〜3週間で成立するなんて。
憲法改正、集団的自衛権、日米同盟の強化の一環として秘密保護法が進められている。
問題の本質を国民に開示し理解させ、説明と説得、これが民主主義。その上で多数決で憲法改正、集団的自衛権を容認するというのなら仕方がない。しかし、実際は、情報を隠し、国民をミスリードして憲法改正、集団的自衛権に向かわせる。
イラク戦争、日本と同じく同盟国であるドイツは大義名分に疑義があるとして参加しなかった。アルカイダとの関係、大量破壊兵器、どちらもアメリカのでっち上げ、嘘だった。アメリカは嘘が発覚したら、それを認めた。イギリスも嘘を認めて徹底検証した。306兆円、つかってイラクに何が残った。アメリカが残したのは内乱。日本政府は今だにこの大義名分が嘘だったとは言わない。航空自衛隊のイラクでの活動は、情報開示しても黒塗り。民主党政権になって情報が開示されて、日本の自衛隊が武装した米兵をクウェートからイラクに運んでいたことが分かった。
絶えず情報を偽装し国民をミスリードし、日米同盟を強化し、官僚を肥大化させる。
辺野古基地移設、自民党議員が全員公約違反して移設容認にまわった。
天皇が天皇制を維持するために沖縄をアメリカに提供した。
鳩山由紀夫首相の時、最低でも県外といった。これを潰したのは防衛官僚、外務官僚。外務事務次官がアメリカに対して、この政権はすぐに終わるから辺野古移設方針を変更しないでくれと言った。
この問題に一人一人真剣に取り組んでもらいたい。
第1部 基調講演(講師西山太吉氏)←あの外務省秘密漏洩事件で沖縄密約をスクープした「西山記者」です(山崎豊子のドラマ「運命の人」では本木雅弘が西山記者を演じました)。
特定秘密保護法案の最大の問題は、特定秘密がどのようにして作られて行くのか。現在の内閣が狙っているのは、日米安全保障体制における交渉の内容や合意事項、それと密接な関係がある防衛問題を、国民の目に触れさせないこと。
際限なく無限に秘密が広がっていく。
自衛隊の運用、計画、研究も特定秘密になる。つまり自衛隊のすべての事項が秘密の対象になる。文民統制(シビリアンコントロール)のもとでは自衛隊の情報は正確に主権者に伝達されなければならないのに、すべての事項が秘密になりうる。
外交については、外国及び国際機関と日本が行う外交交渉、協力関係の内容は特定秘密となる。つまり、外交の内容が包括的に秘密になる。
外交交渉のプロセスを逐一国民に公表する必要はないとは思うが、そこにどんなアクセス(取材)をしようが自由なはず。そして、結論が出た場合は100%国民に正確に伝達しなければならない。
佐藤内閣の時の沖縄密約(核持ち込み容認、5億3000万ドルの支払い、思いやり予算の源流)。政治家すら知らない。
特定秘密保護法案では、外交の結果すら秘密にできる。恐るべきこと。
特定秘密を作るのは誰か。秘密を漏らさないか適性検査をうける。経歴、家族構成、交友関係、借金問題などすべて調べる。こんな人権侵害。こうやって選び抜かれた官僚が特定秘密を作っていく。大臣、政治家はそれを追認するしかない。官僚の傀儡となる。
一度、制度を作ってしまい権限を与えてしまうと、それをどんどん拡張するのが官僚の性質。
特定秘密が適正かどうかのチェック。首相にチェックさせるという意見があるが、首相は秘密を作り出したい張本人。チェック機能が働くわけがない。防衛大臣、外務大臣に委嘱して、結局は官僚の手になる。
第三者機関にチェックというが、政府の政策に従う学者を集めて有識者委員会を作るんだから、チェックが働くわけがない。
60年経ったら公表するなどというが、本来、国の情報は公共のもの。60年経ったら関係者は死んでいる。しかも、公開しない例外も認め永久に秘密にできるようにしている。
政府に都合の悪い情報は永久に隠蔽し、都合の良い情報だけ怒涛のようにリークする。そんなミスリードが行われ、国民はミスジャッジをする。民主主義の空洞化。
全ての分野において、官僚の恣意的判断で秘密が作られて行く。
官僚支配の強化。
チェック機能の保証はない。
永久に秘密にできる。
安倍首相は「知る権利」は保障しますと言うが、それで、マスコミの半分は寝返った。読売新聞、産経新聞、日本テレビ、フジテレビは特定秘密保護法案の問題を全然言わなくなった。反対は大手マスコミでは、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞、テレビ朝日、TBSしかない。
秘密をバラしたら懲役10年なんて、もともと内部告発が起こらない日本の社会で、内部告発はいよいよなくなる。官僚は何も言わなくなる。
特定秘密保護法が動き出したら、外務省が一方的に流すリーク、共同記者会見だけになる。あとは何もない。情報が独占、管理され、操作される。権力の集中、一元化。秘密体制の強化。独裁政権となる。
これまで、こんなに権力の集中、一元化が一気呵成に進むのは見たことがない。
内閣法制局長、内閣人事局、NHK会長、すべて安倍総理の子分を当てた。それと歩調を合わせて秘密を強化。これが完成すると、見事な独裁国会が誕生する。
今、大事なのは秘密の強化ではなく、国家の情報を国民に開示すること。その中で秘密との調整を図るというのが本来の姿。
それなのに、秘密保護法では、情報公開法が空洞化し、秘密の保護だけになる。
こんな法案がたった2〜3週間で成立するなんて。
憲法改正、集団的自衛権、日米同盟の強化の一環として秘密保護法が進められている。
問題の本質を国民に開示し理解させ、説明と説得、これが民主主義。その上で多数決で憲法改正、集団的自衛権を容認するというのなら仕方がない。しかし、実際は、情報を隠し、国民をミスリードして憲法改正、集団的自衛権に向かわせる。
イラク戦争、日本と同じく同盟国であるドイツは大義名分に疑義があるとして参加しなかった。アルカイダとの関係、大量破壊兵器、どちらもアメリカのでっち上げ、嘘だった。アメリカは嘘が発覚したら、それを認めた。イギリスも嘘を認めて徹底検証した。306兆円、つかってイラクに何が残った。アメリカが残したのは内乱。日本政府は今だにこの大義名分が嘘だったとは言わない。航空自衛隊のイラクでの活動は、情報開示しても黒塗り。民主党政権になって情報が開示されて、日本の自衛隊が武装した米兵をクウェートからイラクに運んでいたことが分かった。
絶えず情報を偽装し国民をミスリードし、日米同盟を強化し、官僚を肥大化させる。
辺野古基地移設、自民党議員が全員公約違反して移設容認にまわった。
天皇が天皇制を維持するために沖縄をアメリカに提供した。
鳩山由紀夫首相の時、最低でも県外といった。これを潰したのは防衛官僚、外務官僚。外務事務次官がアメリカに対して、この政権はすぐに終わるから辺野古移設方針を変更しないでくれと言った。
この問題に一人一人真剣に取り組んでもらいたい。
posted by 後藤富和 at 14:29| 平和